政府がいったん決定したことを、国民が対話によって覆す。日本ではなかなか見られませんが、世界では結構普通にあることのようです。
デンマークは、人口約581万人の小国です。高福祉・高負担、環境先進国として知られ、教育にもこんな特徴があります。
成長に合わせて入学のタイミングを決められる
デンマークの学校には、二つの特徴があります。それは、「ソフトランディング」と「探究型の学び」です。
ソフトランディングとは、個々それぞれの発達や特性に合わせた環境を用意し、じっくり自分に向き合いながら、成長することができるということです。
まず、幼稚園から小学校へ上がる際、「0年生」が義務教育化されています。
子どもたちは、0年生に上がる前の幼稚園での最後の半年間くらいで、徐々に幼稚園と学校の間を行き来しながら、学校という環境とそこにいる人に慣れていきます。
そして、小学校に上がる時期も個々の成長に合わせて決めることができます。
中学から高校に上がるときも、学習進度に合わせて希望する生徒は「10年生」に進級する、あるいは、エフタスコーレという全寮制の学校に行くという選択ができます。
エフタスコーレは団体生活を通して社会性を養いつつ、自分は何が好きで何をしていきたいのかを考える学校です。
日本では「留年」というとあまりよい印象がありませんが、デンマークではギャップイヤーといわれるこの期間で、自分が進むべき進路をじっくり考えてから進学することができます。
高校卒業後も、日本のようにすぐに大学に進学するのではなく、ギャップイヤーで世界を旅したり、働いてみたり、フォルケホイスコーレという成人学校に行ったりします。
どういうサポートをしたら学べるのかを考えて、対応していく。こうして一人ひとりが大事にされることによって、自分も周りも大切にするマインドが育っていくようです。
対話によるボトムアップの民主主義
もう1つが「探究型の学び」です。デンマークでは、大人は子どもに「あなたはどう思うのか」「どうしてそう思うのか」とよく質問します。
そして、子どもたちに自分で考えること、それを人に伝えることを促します。
デンマークの先生は「世の中には多様な人がいるのが前提で、その中でいかに人と対話してコンセンサスを取るのかが大事だから、それを試す場所が学校だ」と言うそうです。
友達関係で悩む子どもに「なぜ学校に行かなくちゃいけないの?」と言われたときに、そもそも学校は人との対話を学びに行くところだと答えられる場所だったらどんなにいいでしょう。
小さい頃から自分の考えを持つことを促され、同時に人の話を聞くことを学ぶことで、意見の違いを尊重し合うこと。
合意形成は多数決ではなく、粘り強く対話することによってのみできるということを国民全体が知っているのです。
日本の教育でも、他国におされずに、粘り強く対話できるリーダーが出てくるかもしれません。
参照サイト
欧州北部に位置する北欧諸国の中で最も南に位置するデンマークは、人口約581万人(2019年デンマーク統計局)の小国だ。高福祉・高負担、環境先進国として知られ、毎年国連の関連機関が発表する「世界幸福度報告書」では上位常連となっている。そんなデンマークでは、対話によるボトムアップの民主主義が根付いており、その教育にも大きな特徴があるという。海外の教育事情に詳しい教育ジャーナリストの中曽根陽子氏に解説してもらった。