ここ数年、「自然葬」なるカテゴリーの葬送が日本国内で人気を集めています。
「自然に還る」イメージのある「海洋散骨」や「樹木葬」の類です。米国ではさらに先をいく究極の自然葬「コンポスト葬(堆肥葬)」のサービスが始まり、話題を呼んでいるのをご存じでしょうか。
新型コロナウイルスによる「死」への意識の高まりが、こうした葬送の多様化の後押しをしているとみられます。
今後日本の葬送のあり方にも影響を与えるかもしれません。
遺体を堆肥にする施設「Recompose」
2021年、米ワシントン州シアトルで世界初となる遺体を堆肥にする埋葬施設「Recompose」がオープンしました。有機物を微生物によって分解させ、堆肥にする「コンポスト」。
その処理方法を用いて人間の遺体を専用のコンポストで堆肥化させ、30日後に遺族に土となって戻されるという驚きのビジネスがあります。
米国・ワシントン州ケント市の「リコンポーズ(Recompose)」社でスタートしました。
この会社を設立したカトリーナ・スペードさんは、マサチューセッツ大学で建築を学んでいた10年ほど前から、「自分が死んだら堆肥に」という考えを明らかにして話題になっていました。
地球にも人にも優しい堆肥葬
人間の遺体を堆肥にするのは、火葬や土葬などに代わる新たな埋葬方式。遺体を藁やウッドチップなどで覆って鉄の棺に入れ、約30日間保管すると堆肥になるそうです。
最終的に堆肥がどうなるかというと、家族のもとへと戻されます。堆肥は花壇に混ぜたり寄付をしたりなど、さまざまな使い方ができるとのこと。
堆肥葬が広がりを見せている大きな理由は、火葬や土葬と比べて環境にやさしいからです。
火葬は1回につき約540ポンド(約245kg)の二酸化炭素を排出してしまいます。土葬は遺体の防腐処理材が土壌に広まってしまう可能性があります。
いっぽう、遺体を堆肥にすれば環境への負荷を抑えられて、植物の成長も助けられます。捉え方によっては、これからの時代に適した埋葬方法といえるのではないでしょうか。
また、遺された側は「別れは悲しい。でも、これからは新たな命を育んでいくんだ」と捉えることで、悲しみが和らぐ可能性もあります。
堆肥葬は、もしかしたら人にもやさしいのかもしれませんね。
遺族がその堆肥をどう利用するかは自由で、庭の土に混ぜて故人が愛した草花や樹木を植えても良いし、家庭菜園や農地で役立てれば、感謝の気持ちも一層増すことでしょう。
木材チップ、藁や土が入った六角形のコンポストに遺体を入れると、体の大きさにもよりますが、30日ほどで自然に分解され、数十リットル分の土になります。
コンポスト自体は何度でも再利用が可能です。気になる費用は一遺体あたり58万円。
プロセスが完了した際には、堆肥中の大腸菌やサルモネラ菌、そしてヒ素、鉛、水銀といった残留重金属の含有量についても解析され、オプションで葬儀も追加できるそうです。
最後は、一生涯を通してともにあり、お世話になった地球に恩返しする。論理的であり、美しいことだと思います。
遺族が持ち帰った堆肥を使い、花壇で花や野菜を栽培でき、庭に木を植えることもできます。
お墓まで足を運ばずとも、四季折々に色づく植物の前で手を合わせる。
近しい未来には、墓石の手入れが樹木の世話へと代わる、なんて選択肢もあり得るかもしれません。
参考サイト:
3年前、「人間の遺体の堆肥化」がワシントン州で合法になった。その後コロラド州やオレゴン州などに広まり、今度はカリフォルニア州でも認められるようになったらしい——。
自分が死亡したら、遺体をどうしてほしいか。お墓の下に眠るより樹木葬や散骨に興味がある、という人が増えているなか…
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