肝臓には寿命がないらしい

現在、日本で臓器移植を希望してJOTに登録している方の総数は、約15,000人です。

一方で、1年間で臓器移植を受けられた人は、約400人。わずか2~3%の人しか移植を受けることができていないというのが現状です。

近年の研究では肝臓などいくつかの臓器には寿命の上限が存在しない可能性が疑われていましたが、今回の調査はこの疑いを後押しする結果になりました。

肝臓は100歳超え

米国のテキサス大学(University of Texas)で行われた研究によれば、移植の前後で累積年齢が100歳を超える肝臓が25個も存在しており、最高齢の肝臓の年齢は108歳に達していたとのこと。

研究者たちは「これまで高齢者から提供された古い肝臓を移植に使うことは敬遠されていたものの、今回の研究によって、非常に上手くいく場合があることが判明した」と述べています。

近年の長寿研究により、実年齢と臓器などの生物学的年齢が必ずしも一致しないことが明らかになってきました。

実年齢が35歳であっても、肌年齢が20代後半、腎臓年齢が60代後半、聴覚の年齢は40代前半と、体のパーツごとに老化の速度は大きく異なる例が数多く確認されています。

このようなアンバランスは臓器移植において有利不利、どちらにも大きく影響します。臓器提供者の実年齢が若いほうが移植の成功につながりやすいのは事実です。

実際、心臓や膵臓の移植成功率は提供者の年齢が40歳を過ぎると低下していきます。一方、肺にかんしては提供者の年齢が65歳まででであれば、成功率に大きな差はありません。

角膜に至っては、提供者の年齢は移植の成功率にほぼ無関係となっています。

肝臓を含むいくつかの臓器には寿命の上限が存在するかどうかが疑わしいとするデータが得られています。

たとえば2008年にトルコで行われた移植では、肝臓の提供者は93歳の高齢女性だったものの、患者は順調に回復し、6年後には体内に移植された肝臓の累計年齢が100歳を超えました。

肝臓は外科手術によって3分の2が切り取られても、1年後にはほぼ元のサイズに戻るなど、優れた再生能力が知られています。このような再生能力がある臓器は、肝臓以外に存在しません。

臓器不足が大きく解消する

テキサス大学の研究者たちは1990年から2022年の間に実施された25万件以上の肝臓移植結果を調査し、移植された肝臓の累積年齢を追跡してみることにしました。

すると累積年齢が100歳を超えた「1世紀肝臓」が25個も存在したことが判明。最高齢の肝臓の年齢は108歳にも達していました。

また「1世紀肝臓」の提供者の平均死亡年齢は84.7歳であったにもかかわらず、全ての肝臓が少なくとも10年以上、患者の体内に存在していました。

一方「非1世紀肝臓」の場合、提供者の平均死亡年齢は38.5歳でしたが、移植された肝臓が10年後に存在している確率は60%に過ぎませんでした。

この結果は、条件によっては、高齢者から提供された肝臓のほうが、若い人から提供された肝臓よりも、移植成功率が高い場合があることを示します。

肝臓の寿命には、まだ知られていない未知の要因によって大きく変化し得る可能性があるといえます。

研究者たちは今後も「1世紀肝臓」の特性を調べ、移植成功率や肝臓の寿命にかかわる因子を調べていくとのこと。

もし条件を特定し人工的に再現することができれば、より多くの高齢者を潜在的な臓器提供者とすることが可能になり臓器不足が大きく解消するでしょう。



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