鉄道網が発達するまで、海や川を利用した水上輸送は人が移動したり荷物を運ぶ上で欠かせない交通インフラとして使われてきました。
水上輸送に代わる輸送インフラとして鉄道や高速道路網、航空輸送が発達した今でも、水上輸送を便利に活用している都市や、船でしか人やものが運べない地域もあることも事実です。
しかし、船はたとえ小型のものでも操縦に特殊な技術が必要であることから、専門の教育を受けた人材の確保が必要です。
そんな中、人材確保の課題解決だけでなく新たな観光や物流にも貢献する、未来のモビリティが誕生すると話題を呼んでいます。
完全自動運転の船を開発している
駅を中心として市内に網の目状に運河が広がっているオランダのアムステルダムでは、自動車による混雑を緩和するため、将来的には交通の一部を長さ約100kmの運河網に移すことを計画しています。
そこで、マサチューセッツ工科大学とAMSインスティテュートの共同研究チームは、アムステルダムの運河を自律航行する電動式の完全自動運転型ロボットボート「Roboats」の開発しました。
荷物やゴミの運搬を行う計画がある
2021年11月から、4基の電動スラスター(動力装置)を搭載した長さ約4mのRoboatsが、最大定員5人を乗せ、最高時速6kmで水上を航行する実証実験が行われています。
充電はドックに収まっている間にワイヤレスで行われ、バッテリーのサイズによって1回の充電で12時間〜24時間使用できるといいます。
用途としては、人の輸送だけでなく廃棄物の回収や商品の配送など、通常、人間が行なっているさまざまな作業に利用することが想定されています。
路面と異なり、水面は天気や風、潮流、潮の満ち引きなど自然環境による変化が大きいことから、自動車のように自律自動運転ですべてのボートを運航させることは容易ではありません。
また、どんな状況であっても物体への衝突による事故を起こさずに、目的地までの航行を行うまでには数年かかるとみられています。
日本でも船の活用が検討されている
このような水上を活用する動きは日本でも始まっており、竹中工務店や東京海洋大学などの研究チームは都市型自動運転船「海床ロボット」の開発を進めています。
「海床ロボット」は海や運河・河川並びに湖沼などの水面に浮かべた床(3㎡)が自動で動き、離着岸する自動運転船です。
実証実験では純国産制御システム搭載の「海床ロボット」を大阪・関西万博の会場である夢洲内の水域に見立て、大阪城公園の東外堀に浮かべ、新しいモビリティ活用の可能性を検証しました。
今後は「運搬ドローン連動機能」「複数ロボットの群管理」の検証を目指し、運搬や環境、エンターテイメント、防災など用途に合わせた開発に取り組むことが予定され、万博に向けてますます期待が高まっています。
四方を海に囲まれた日本の大都市は川辺や海辺を中心に形成されてきましたが、大都市臨海部は都市の過密化によって、交通や物流、環境、防災などに課題が多くあります。
今回の開発は水辺のさまざまな都市問題を解決する糸口になり、都市部での水域の活用を変革する、”未来のはじまり”なのかもしれません。
引用画像:
https://www.dailysabah.com/business/transportation/electric-self-driving-roboats-to-conquer-amsterdams-canals
https://robotstart.info/2021/12/17/seabed-robot-experiment.html
参考サイト:
The electric-powered “Roboat” is due to start test journeys aimed at improving the crowded city’s transport options.
Soon, self-driving watercraft will tuck along the historic canals of Amsterdam, ferrying passengers, transporting goods or trash all the while being the...
鉄道網が発達するまで、海や川を利用した水上輸送は人が移動したり荷物を運んだりする上で欠かせない交通インフラだった。水上輸送に代わる輸送インフラとして鉄道や高速道路網、航空輸送が発達した今でも、水上輸送を便利に活用している都市や、船でしか人やものが運べない地域もある。ただし、船はたとえ小型のものでも操縦に特殊な技術が必要なので、専門の教育を受けた人材の確保が必要だ。船の操縦が自動運転になれば、人材確保の課題解決だけでなく新たな観光や物流にも貢献する、未来のモビリティが誕生するかもしれない。
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