国連人口基金のデータによると、意図せず起きる妊娠は世界で年間約1億2100万件に上り、妊娠全体の半分近くを占めることが明らかになっています。
この背景には、性暴力や性行為の強要、男女不平等、教育、自分で入手し服用できる避妊薬の欠如といった問題がありますが、新たな避妊薬の開発によって、解決の糸口になるかもしれません。
精子の機能を2時間制限する
アメリカ・コーネル大学医学部研究チームは、一時的に精子の動きを止める薬の開発を成功したことを発表しました。
新薬は、一度の経口投与によって、マウスの精子の機能を最大2時間半にわたって停止させ、最初の2時間に関しては100%の効果を示したといいます。
投薬を受けたマウスは通常の交尾行動が52回確認されたにもかかわらず、雌が妊娠した事例は全くないことがその効果として挙げられます。
短時間で効果を発揮する
これまで開発が進められてきた男性用避妊薬の多くはホルモンによる受精能力抑制を基盤としており、効果を発揮するまでの期間や効果が薄れるまでの期間として、数週間から数カ月が必要だったといいます。
しかし、今回の研究によると、この薬は投与から30分~60分という比較的早い時間でその効果を発揮することが特徴です。
さらに、精子が機能するために必要な酵素を阻害する仕組みで、効果は3時間後には91%まで低下し、翌日には受精能力が通常に戻るといいます。
人間への実用化には時間がかかる
今のところ、マウスの実験で成功しただけですが、研究チームは3年以内に人間での臨床試験を行い、8年以内の製品化を目標に研究を進めています。
そして、最終的には、1時間以内に効果を発揮し、6時間〜12時間は妊娠を防ぐ非ホルモン性の男性避妊薬の開発が期待されています。
避妊薬は手軽で即効性があり、必要な時にだけ効果を発揮するだけでなく、パートナーの目の前で飲むことで信頼性を得られるのが大きなメリットだといわれています。
避妊方法の選択肢が増えたことは歓迎される一方で、本来目指すべきことは、薬に頼らず望まない妊娠を防ぐことであり、そのためには私たち一人ひとりが正しい理解の周知に努めるべきであることも忘れてはいけません。
参考サイト:
Researchers said the study signals a path towards an on-demand “male pill” that can be taken when needed, with an oral dose taking 30 and 60 minutes to work in mice and fertility returning to normal within a day.