運転は認知症予防になるかもしれない。

昨今、高齢者の運転は危険だという風潮が広がっていることから、高齢者が運転免許の返納を促される実情があります。

しかし「65歳以上の高齢者による車の事故率が、他の世代に比べて特別高い」というデータは存在しません。さらに、運転をやめることで、”あるリスク”が高まる可能性が高いことが明らかになりました。

20代の事故件数が全世代で最も多い

警視庁が発表したデータによると、最近10年間で確実な減少傾向が見られるとはいえ、20代が最も多く事故を起こしており、2015年の事故発生件数は101,753件と全世代で最多です。

これは、同年に80歳以上の運転者が起こした事故件数の11.8倍にも及びます。確かに、80歳以上の運転者による事故発生件数には上昇傾向にありますが、70歳〜79歳の運転者による事故の発生件数は10年間ほぼ横ばいです。

日本は高齢化が加速しており、高齢運転者の総数が多ければ事故の発生件数が増加することも当然です。しかし、この結果だけを根拠に“高齢ドライバーは事故を起こしやすい”と言い切ることは不可能です。

高齢者の事故が多い事実はない

年代ごとに人口や運転免許保有者数も異なるため、交通事故発生件数から事故を起こしやすい年代を特定することは簡単ではありません。

そこで、各年代の運転者による事故発生件数をもとに免許保有者10万人あたりの事故発生件数を算出する、事故発生状況が役に立ちます。

これによると、70歳〜80歳以上の運転者による事故件数は20歳〜29歳による事故発生件数よりも少ないことが明らかになりました。つまり、高齢運転者が事故を起こしやすいと安易に結論づけることは間違いだと分かります。

運転をやめると介護リスクが高まる

さらに、筑波大学の研究チームによる研究で、運転をやめた場合、高齢者には”あるリスク”が高まることが明らかになりました。

65歳以上の男女2,800人を10年間調査したところ、車の運転をやめた人は、運転を続けた人に比べて、要介護になるリスクが2.09倍になったといいます。

これまで外出の際に車を運転していた人は、免許を返納してしまうと外出の機会が極端に減ります。特に交友範囲が狭くなり、運動量が少なくなることは避けられません。

このような生活を続けると、気力体力ともに衰え、数年のうちに介護が必要になる、あるいは認知症になる人が増えることも想定しなければなりません。

車は地域によって大切な生活の足として手放せない現実もあり、なかなか免許の返納に踏み切れない高齢者も多いとみられています。

今後、自動運転機能を搭載した車も登場し、高齢者でも安全に運転できることができれば、この問題の解決につながるのかもしれません。

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