日本では認知症患者の6割以上が「アルツハイマー型認知症」だとされています。
アルツハイマー病は、神経細胞の中にアミロイドβと呼ばれるたんぱく質が蓄積されることによって引き起こされると考えられています。
昔からいわれる「頭を使っている人はボケにくい」というのは一面の真理です。
脳の萎縮が同じくらい進んでいる2人の認知症患者を比較すると、何もしていない片方の人はかなりボケてしまっています。
しかし、日頃から頭を使う環境にいたもう片方の人はそうでもなく、知能テストをするも明らかに後者のほうの点数が高かった、というケースがままあります。
「脳トレ」より「人との会話」
近年、「脳トレ(脳力トレーニング)」が、脳に刺激を与え、ボケ防止に役立つということでブームになっています。
ただ「脳トレ」は残念ながら、認知症予防という観点からはほとんど無意味だと最近、海外の研究で明らかになっています。
では、いったいどうやって「頭を使う」といいのか。もっとも効果が高いと感じられるのは、人との会話です。
他人とのおしゃべりでは、自分の話したいことに対して相手から反応が返ってきますし、強制的に頭を働かせなくてはいけない局面が増えます。
もちろん、仕事や家事も複数の知的作業をともなうので、「頭を使う」ことにつながります。「生涯現役」というスタンスも、有力な脳のトレーニング法といえるでしょう。
70代からは「比べない」
70代ともなると、世代全体の10%が認知症になります。残りの9割は依然として頭がはっきりしており、健康な人とそうでない人の差が、はっきりと分かれてきます。
外見の面でも、同級会などで集まれば、みな同い年のはずなのに一見して「え?」と驚くくらいの個人差が容姿の老け具合に出てきます。
社会的にも、現役バリバリで社長を務めている人がいるかと思えば、定年退職した人の多くは「無職」という肩書をつけられてしまう現実があります。
だからこそ、なにかと「あいつに比べて自分は……」という引け目を感じやすくなり、人によってはそれが重荷になってくることもあります。
他人にはできて、自分にはできないことについて思いを巡らせて悶々とするよりは、「いまの自分に何ができるのか」ということを前向きに考えたほうが、ずっと健康的に生きられます。
人と比較するより、自分の生き方を模索するほうが賢明です。
「知らんがな」は魔法の言葉
人と比較しないことを助ける魔法の言葉があります。それが、「知らんがな」という言葉です。
「知らんがな」は関西弁で、関西では多くの人が日常で頻繁に使う言葉のひとつです。「知らんがな」はどこか笑いのニュアンスがある、ほんわり温かいイメージがある言葉です。
わかりやすくいうと、なにかあったときに「知らんがな」とつぶやくだけで、心に余裕が持てて、視点や発想をうまくチェンジすることができます。
つらい気持ちだったとしても、「そんなん、知らんがな」と力を抜けば、「まあ大変だけど、そんないまの時間も楽しんでみよっか」と思えてしまうから不思議です。
自分が置かれた状況を、自分でちょっとした笑いに変えて、これまでの考え方や行動、結果に至るまでのプロセスすべてを、いい方向へと切り替えてくれます。
「知らんがな、わたしはやるよ」
「そんなん、知らんがな。わたしはわたし」
「知らんがな」と口にするたびに、発想がポン、ポンと切り替わっていき、ひとつのことにとらわれなくなっていきます。
参考サイト:
老年医学の専門家である和田秀樹氏は「40歳こそ老化の始まり。この年代から“足りないものを足す健康法”へのシフトが重要だ」と説く。このたび上梓したセブン‐イレブン限定書籍『40歳から一気に老化する人、しない人』より、その一部を特別公開する──。(第3回/全4回)
生きづらさを解決するにはどうすればいいのか。心理カウンセラーの中島輝さんは「人生を楽しむには、心の余裕がいる。これには『知らんがな』という言葉が有効になる。目の前の問題にとらわれすぎてはいけない」という――。