DXで介護の人手不足に活路を見出した。

総務省統計局によると、2020年9月時点での日本の高齢者は3,617万人と年々増加し、少子化に歯止めが効かない状況の中、超高齢化社会も大きな問題になっています。

また2025年には、団塊世代約800万人が後期高齢者になることから国民の3人に1人が高齢者になると推測され、介護問題はさらに大きくなるとみられています。

2021年4月時点でも、介護を必要とする人は約700万人に迫る中、年々介護職員の確保が難しくなり、2025年には約34万人の職員が不足するといわれています。

このような高齢化による介護の問題は日本のみならず、多くの国でも課題を抱えていますが、少しでもこの状況を打開しようとオーストラリアでは新しい技術の導入を進め、成果が出始めています。

在宅ケアに方針を転換した

日本における介護といえば、介護施設、つまり「老人ホーム」に入居し、あくまで施設で介護士に面倒の全てを任せる傾向が強く、施設の数は年々増加しているといわれています。

一方、オーストラリアでは「慣れ親しんだ環境で出来る限り自立した生活の営みが、本来の人間の尊厳に合致する」という考えから、在宅ケア中心の介護サービスが展開されています。

従来は日本と同じく施設中心の介護政策をとっていたオーストラリアですが、1985年の在宅介護コミュニティケア法の制定からは「在宅介護・地域介護」への転換を図っています。

コロナ禍以降遠隔診療が普及した

在宅介護に移行した背景には、オーストラリアの土地が広大で、高齢者や医療関係者の移動に課題があったことが大きいといわれています。

さらに新型コロナウイルスのパンデミックにより、高齢者への感染を防止するため、その動きは急速に広がり、2020年10月時点で60%超の高齢者が遠隔介護や遠隔医療を導入したことが明らかになっています。

中でも約90%がビデオ診療システムの導入で、内容としては要介護者の定期的な状況確認やケアプランのスケジューリング、レビュー等が行われています。

DXの普及で介護士の負担を軽減した

メルボルンにあるAged Care GPは2020年にパンデミックが起きたタイミングで素早く在宅介護施設の支援を実施しました。

在宅ボタン1つで導入できる限りなく簡単なシステムが受け入れられ、その結果、2020年時点でメルボルン全体の20%の施設をカバーし、遠隔診療の成功モデルとされています。

またすでに存在するテクノロジーを活用した技術を用いることでデジタル化へのネガティブなイメージを払拭できたことも成功の要因だといわれています。

昨今オーストラリアでは物価の高騰により、介護職員の報酬は平均時給で3,000円を超えるとのデータもありますが、介護士の人手不足は深刻化しています。

まずは医師による診療だけでも遠隔で行うことができれば、わざわざ介護士や家族が病院に連れて行く手間を省くことができ、人手不足の一助になるとみられています。

介護保険制度の有無をはじめ、サービスを提供するための財源も異なり、さらに介護に対する考え方の違いから、他国の介護の仕組みを取り入れることは難しい側面もあります。

しかし、人手不足を解消し、作業の利便性を向上させる「DX」は介護だけでない、多くの分野での導入が早い段階から叫ばれていることは事実です。

全てにおいて、スピード感のない日本は、他国から置いていかれるだけではなく、さらに問題が大きくなり、身動きが取れない状態に陥ってしまうのかもしれません。

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