凧が船の動力になる。

船は、人類誕生とほぼ同時に生み出された最古の乗り物だといわれ、今日私たちが利用する移動手段とは比較にならないほど長い歴史があるとされています。

そして、船はただ人の移動手段としてだけではなく、紀元前3500年頃には、葦を編んで船上に吊り下げ、風をとらえる帆船が造られ、ナイル川を航行する海上貿易が始まったといわれています。

やがて船の立ち寄る場所には港ができ、その港を中心に地域が栄え、世界経済の成長に伴い、海上輸送の需要は着実に拡大してきました。しかし、その反面、現在は船によって深刻な環境問題が起こっていることも事実です。

温室効果ガス削減目標が設けられた

現在、国際貿易の90%は船舶輸送により行われており、主要な輸送方法ですが、世界の温室効果ガス排出量の3%、CO2換算で年間10億トンの温室効果ガス排出されています。

この問題に対し、船舶輸送による大気汚染を規制する国際海事機関は、温室効果ガス削減のために2023年1月1日以降、400総トン超の船は一定のエネルギー効率を満たす強制措置を導入しました。

さらに世界の船から排出される温室効果ガスの量を、2050年までに2008年のレベルから半減させるという業界の目標も設けられました。つまり、国際貿易を続けるためには、その標準をクリアしなければならないということです。

目標達成のために風力の活用をする

そこで、海運業の大手数社は汚染ゼロの目標と排出量の基準をクリアするため、古代から使われてきた技術「風力」を活用し、大型船の改造や新たな船の開発を進めています。

貨物船を引っ張る巨大な凧をはじめ、膨張式の帆、それから揚力を生み出すローターの設置など、風力を駆使した商船への移行は加速しており、2023年までに大型船の数は倍増することが見込まれています。

商船三井も導入を進めている

日本の大手海運会社、商船三井は2025年から2029年にかけて風力推進装置12基を製造し、船舶に搭載することを発表しています。

これによって1本の帆当たり温室効果ガスの排出量を5%~ 8%程度削減でき、さらに1隻に複数の帆を搭載できることから、さらなる削減も可能だといいます。

同社では、この風力推進装置「ウインドチャレンジャー」搭載船を多く運航し、2050年の温室効果ガス排出量実質ゼロ達成に貢献できるとしています。

ウインドチャレンジャーを搭載した最初の船舶「松風丸」は、東北電力用の石炭輸送船として2022年10月に運航が始まっています。

帆の材質は繊維強化プラスチックで、4段式に伸縮し、最大で高さ53mまで伸び、帆の回転や帆の伸縮も自動制御により行うことできる斬新なデザインです。

風は無尽蔵であり、何よりエコなエネルギーであることに間違いありません。原点に立ち返った船が、現代の風を味方につけ、未来の海運業界を大きく変えるかもしれません。

引用画像:
https://newswitch.jp/p/34909

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