木がバッテリーの原料になる。

2030年は、世界でひとつの節目の年になるといわれており、その一例にSDGsがあげられます。日本では、省エネZEH基準住宅の建設や太陽光パネル設置の目標が定められるなど、待ったなしの脱炭素時代へ向けて進んでいます。

特に私たちの生活に欠かせない自動車業界ではいち早くその動きが加速しており、中でも電気自動車の普及に欠かせないバッテリーに”新しい風”が吹き始めています。

EV原料の争奪戦が起きている

自動車に搭載されているバッテリーは、長距離走行を実現させるため、家電に使われるものより容量が大きいことが特徴です。加えて、充電と放電を繰り返しても、長期間使い続けられるような仕組みになっています。

その原料は、主にリチウムやコバルトなど「レアメタル」が使われていますが、スマートフォンや半導体などにも使われているため、近年急速に需要が伸びています。

さらに、南米やアジア、アフリカなどの一部の国でしか産出できないことから、その名の通り希少性が高く、争奪戦の様相を呈しています。

再利用で環境に悪影響を及ぼす

そこで使い終わったレアメタルをリサイクルすることで環境問題にも貢献しながら、原料の確保をしようと取り組みが行われています。

しかし、リサイクルする過程で使用済のEV用バッテリーの多くを焼却する必要があり、その結果、多くのCO2が排出され、環境にダメージを与えるという皮肉な事態が起きていることが実情です。

欧州内だけで原材料を調達する

そんな中、2030年までに脱ガソリン、脱ディーゼル車を目指す欧州の自動車業界では、さまざまな素材を用いたバッテリーの開発が進められています。

フォルクスワーゲンが支援するバッテリーメーカー「ノースボルト」は、紙製品を専門に扱う「ストラ・エンソ社」と業務提携すること発表し、話題になっています。

今回のジョイントは、天然原料「リグニン」のハードカーボンから作られたバッテリー生産に乗り出すことが目的で、化石ベースの材料からの脱却を目指しています。

リグニンは、パルプ製造においては除去される不要な成分ですが、植物を木質化させ強固にする性質があることから、接着剤をはじめとするさまざまな用途の可能性を見出されている注目の素材です。

さらに、植物由来の再生可能な素材を使うことで、環境保全にも貢献します。このように北欧地域の森林から木材を調達し、原材料の全てを欧州産とする世界初の地域完結型製造の実現が期待されています。

ヨーロッパの森林の面積は過去数十年間で、多少の変化はあったものの、全体的には増加傾向にあるといわれています。

2030年に向けて、電気自動車の販売台数はますます伸び続け、これに伴いバッテリーの需要も加速することが予測されます。

木を原料にするアイデアは、持ちつ持たれつの関係を生み出し、さらに資源不足の”救世主”になるのかもしれません。

引用画像:
https://chargedevs.com/newswire/stora-enso-and-northvolt-partner-to-develop-wood-based-batteries/

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