今から約5000年以上前に作られたガラスは私たちの生活に欠かせないもののひとつであり、家の窓や車の窓、食器、鏡などあらゆる場所で使われています。
今日までさまざまな用途や製法が確立し、大きく進化していますが、昨今窓ガラスの新しい開発が進み、さらに便利で複数の機能を持ち合わせた窓が誕生し、注目を集めています。
一般的に窓は透明が良い
建物のイメージは、窓の数や形、色によって大きく変化するといわれています。マイホームを建てる時に色付きの窓を導入する場合もありますが、一度設置すると簡単に透明な窓に戻すことはできません。
またDIYの流行により、窓にシートを貼ることでカラフルにすることもできますが、手間がかかる上、綺麗に貼ることができないデメリットもあります。
しかし、透明な窓は可視光線と赤外線の両方を通過させるため、部屋を明るくすることに加え、断熱効果を高めることから、わざわざ窓に色をつける必要はなく、既存の窓で十分だとする見方もあります。
変色するイカから着想を得た
そんな中、トロント大学の研究チームは、イカの皮膚から着想を得て、窓の色を自由自在に変化させることができる「液体窓」の開発を進めています。
イカは透明になったり、状況に応じて赤や黒などさまざまな色に変化したりすることは知られていますが、この変化は、イカがもつ層状の皮膚によって生じています。
光の吸収を制御する器官や反射や虹彩に影響を与える器官などが積み重なっており、互いに連携し、複合的に作用することでユニークな光学的特性を示すというものです。
研究グループは、この特性をガラスに応用し、厚さ数ミリのプラスチックシートを複数重ねた窓ガラスを提唱しました。
それぞれの層には、液体を送り込むための経路が内蔵されており、層ごとに別々の光学特性をもった液体を自由に注入したり排出したりできる仕組みです。
最大50%の節電効果を得られる
このような液体の出し入れによって、赤外線、可視光線のそれぞれを選択的に通過させたり、カットすることも可能です。
この窓を導入した場合のエネルギー消費を検証した結果、赤外線を調節するだけで、建物で使用する冷暖房、照明の年間エネルギーを約25%削減できることが明らかになりました。
さらに、赤外線と可視光線の両方を調節した場合、50%以上の節約になることもわかっています。つまり、これらを自由に組み合わせることで、部屋を明るく保ちながら、冬は暖かく、夏は涼しくお得に調整できるということです。
ちなみに、液体窓のそれぞれの液体に色を付けることも可能で、窓を取り替えることなく、気分に合わせて瞬時にDIYが実現できます。
見た目と特性を柔軟に変化できる液体窓は、まだ試作の段階ですが、今後の研究と改良で製品化に至ることを期待したいものです。
引用画像:
https://news.engineering.utoronto.ca/liquid-windows-inspired-by-squid-skin-could-help-buildings-react-to-changing-environments-save-on-energy-costs/
参考サイト:
U of T Engineering researchers create bio-inspired system that can optimize the wavelength, intensity and dispersion of light reaching building interiors
カナダ・トロント大はイカの皮膚に触発された窓を開発。複数の薄い層に異なる光学特性の液体を注入・排出することで色や赤外線の透過特性などを変化させ、室内の温度管理や明るさ調整ができるという