塗料が飛行機の燃費を向上させる。

美しい街並みが多いことで有名なヨーロッパの都市では、カラフルな家が立ち並んでいる街が観光地として知られています。

中でもイタリア・ヴェネツィアではカラフルさを維持するため、隣とは異なる色で塗装することを求められるなど、厳しい景観条例によって地域が団結して、風景の維持に努めています。

しかし、見た目の美しさだけではなく、物体そのものの性能や環境にまで貢献する構造色を使った塗料の開発が進み、話題になっています。

構造色は耐久面に課題があった

そもそも「色」は物質が吸収する光の波長によって決まります。例えば、植物の葉の緑色は、葉の色素が赤や青の波長を吸収し、緑の波長を反射しているということです。

そこで、特定の光を吸収する化学的な色素を持たず、光の波長より小さな微細構造が、光を反射・屈折・干渉させることで、発色しているように見える構造色を利用した塗料が注目を集めています。

構造色は従来の塗料に比べて鮮やかで、光学部品に用いた場合応用が期待できる一方、色を作ることが難しく、僅かな劣化や、傷によって色が変化してしまう可能性があり、耐久面に課題を残していました。

金属粒子から色を作る

そんな中、アメリカ・セントラルフロリダ大学の研究チームは「ナノアイランド」と呼ばれる微細な金属粒子の集合体を構造色として利用することに着目しています。

当初チームでは、金属を蒸発させて薄膜を形成する装置を使い、アルミニウムの鏡を作成する研究を行っていましたが、想定通りの構造はできず、鏡として機能しなかったといいます。

一方で、意図せずナノアイランドが発生したことで、ナノアイランドのサイズを変更することを提案し、わずかな操作で色を作り出すことに成功しました。

新塗料はエネルギーの節約になる

この塗料は、わずか150nmの極薄の層で表面を覆って完全に着色できるため、従来の塗料と比べて驚くほど軽く「世界で最も軽い塗料」だといいます。

大型ジェット旅客機「ボーイング747」に適用した場合、従来の塗料を500kg使用する代わりに、たった1.3kgで同様の面積をカバーできるようになることから、1機あたり1,000kg以上燃料の削減が見込まれています。

また、従来の塗料と比較し、表面温度を20℃~30℃低く保つことができる赤外線を吸収しない性質を持つことから、エネルギー節約に貢献すると期待されています。

塗装の果たすもうひとつの重要な役割「保護機能」については、まだ具体的な実験や比較が行われておらず、今後さらなる検証が求められています。

とはいえ、新しい塗料の開発は重量制限が厳しい宇宙船や惑星探査機にも活路を見出したことは事実であり、文字通り世界を塗り替えるのかもしれません。

引用画像:
https://www.ucf.edu/news/ucf-researcher-creates-worlds-first-energy-saving-paint-inspired-by-butterflies/

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