近年、高齢ドライバーのブレーキ踏み間違い事故が増加しています。困ったことに自覚症状がないかたも少なくないという点です。
自分の親のことを考えると気が気でないのはみなさん一緒じゃないでしょうか。ところが、そんな不安を一気に吹き飛ばしてくれるような研究発表があったのです。
今回、名古屋大学の川合 伸幸氏ら研究チームは、ブレーキを踏み間違える高齢者の脳活動を調査しました。
その結果、運転中の高齢ドライバーの脳は、踏み間違えていなくても常にフル活動しています。
特にブレーキ操作するときの「足でペダルを斜めに踏む」場面では、高い認知負荷がかかっていると判明しました。
研究の詳細は、2022年6月23日付の科学誌『Behavioural Brain Research』に掲載されています。
高齢ドライバーの脳はフル活動していて、「処理の限界」を超えやすい
実は、2016~2022年に生じた248件のブレーキの踏み間違い事故のうち、141件は75歳以上の高齢者によるものでした。
その原因は、加齢に伴う認知機能の低下や脳機能の変化だと考えられていましたが、これまで足を使った実証実験やその際の脳活動の研究は行われてきませんでした。
そこで今回、川合氏ら研究チームは、高齢者と大学生を比較したブレーキの踏み間違いテストを実施し、その際の脳活動の違いを比較しました。
下記のルールに応じて、アクセルとブレーキを踏んでもらい、その時の脳活動をモニタリングしました。
- 信号の形が「〇」なら右足、「△」なら左足を使います。
- 信号の色が「緑」ならアクセル、「赤」ならブレーキを踏みます。
- 例えば、「緑〇」なら右足でアクセルを踏むことになります。
同様の方法で、足の代わりに手で押す実験も行いました。
その結果、高齢者と大学生の両方で、足で斜めにペダルを押す(右足でブレーキを踏む)方が、まっすぐにペダルを押す(右足でアクセルを踏む)よりも判断時間が遅くなります。
また、脳への負荷が大きいことが判明しました。
そもそもブレーキを踏む操作(足を斜めにクロスする操作)では脳の認知負荷が高く、この操作が高齢者の脳をさらに追いつめていたのです。
それだけ、高齢ドライバーの脳はフル活動していて、「処理の限界」を超えやすかったのです。
今回の研究により、高齢ドライバーがなぜブレーキの踏み間違い事故を起こすのか、より深く理解できるようになりました。
もちろん、行動のテストだけでは、潜在的な危険を検出することはできません。脳機能も合わせて検査することで、事故予備軍を検出できる可能性があるようです。
おそらく家族から、免許返納をさせられた方も多いと思います。特に田舎においては、車がなければすごく行動範囲が狭くなります。
となると家にこもりがちになります。ほんとうは、健康のためにも出かけて発散するべきでしょう。
これらのことと念頭に、車を開発してくれると、どれだけ喜ぶ方がいるのだろうと考えると非常に楽しみです。
参考サイト:
名古屋大は高齢者と大学生を使ったペダル操作の実証実験を実施。結果、操作行動に問題がなくても高齢者はペダル操作で脳がビジー状態に近くなっており、特に足を斜めに出すブレーキ操作の認知不可が大きいことが判明しました