赤ちゃんはもぞもぞ動きで成長する。

一般的に、野球や剣道は「基本の型」があるといわれています。それは、技の取得し、極めるためには繰り返し練習が必須であると考えられているからです。

では、人間が当たり前にしている動作「歩行」はどうでしょうか?これも同じように「型」に沿った基礎練習が必要だと言われていますが、最近になって、その原点は赤ちゃんの”ある動作”だということが明らかになりました。

赤ちゃんの動きは謎に包まれていた

生後数ヵ月の赤ちゃんは、特に目的もなく、手足をもぞもぞと動かすことがあります。外部からの刺激を受けて行われるわけでも、赤ちゃんが意識的に実施しているわけでもないことから「自発運動」と呼ばれています。

この動きは、将来の発達に重要な役割を果たしているはずだと、古くから考えられてきました。しかし、長年、その意味や身体的な影響の研究は行われてこなかったといわれています。

もぞもぞして、歩く準備をしている

そこで、東京大学の研究グループは、赤ちゃんの関節にセンサーを付けて動きを観測し、筋骨格モデルを併用することで「もぞもぞ動き(自発運動)」を科学的に分析しました。

その結果、ヒトは発達初期の自発運動によって、感覚運動に関する時間的および空間的パターンを獲得し、将来的に全身の高度なコントロールが必要な歩行や、予測的な動きができるように準備していることが分かりました。

さらに、新生児に比べて乳児は反射的な運動が少なく、意思に基づく随意運動が増加している可能性も明らかになりました。

つまり、赤ちゃんたちの行う手足の「もぞもぞ」は、将来歩くための”準備”であるとみられています。

動きによって個性を育む

さらに、別の東京大学の研究チームでは、赤ちゃんの「もぞもぞ動き」が脳の発達に関連する研究を進めています。

この研究は、ヒトの脳の発達を探るもので、成果の中には、赤ちゃんの自発運動と脳の発達との関連性が示されたものもあります。

例えば、赤ちゃんの睡眠には「動睡眠」と「静睡眠」があるといわれていますが、中でも「動睡眠」は脳の発達に大きな影響を与えていると考えられています。

さらに、80人の赤ちゃんを調査した結果、手足の動きには1人ひとり異なることが分かっています。つまり、自発運動によって、個性が育まれる可能性もあるということです。

赤ちゃんは、これまで考えられてきたより早い段階から、身体作りに励んでいたのかもしれません。「もぞもぞ動き」の凄さを知った今、機会があれば、赤ちゃんの行動を観察してみてはいかがでしょうか。

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