人為的な要因による気候変動は、食料安全保障の脅威となっていることは広く知られており、異常気象によって、農作物の収穫量は年々減少し、2050年には穀物価格は最大23%上昇すると予測されています。
その結果、世界の人口を支える食料システムは維持が難しくなり、紛争が起こる可能性も指摘されていることが事実です。そんな中、温暖化の抑制だけでなく、食料危機を克服するかもしれない技術が登場し、話題を集めています。
海上に栽培農園を設置する
静岡県浜松市に本社を置く建築テックのスタートアップN-ARKは、海の上で、海水を使って野菜を育てる未曾有のアイデアの実現に向けて取り組みを始めています。
同社の運営する海に浮かぶ施設農園「グリーンオーシャン」は、海上では食料農作物、海面下では海中環境改善のための土壌改善技術の導入と養殖技術の導入を計画しています。
海水に耐える特殊な根を育てた
海水農業は、元々海水に含まれている栄養を損なわず、海水に雨水を混ぜることで成長に必須な窒素、リン酸、カリウムを揃え、pH調整し「湿気中根」という特殊な根を育成させる方法を採用しました。
湿気中根が発達した野菜は、10℃〜15℃の温度の変化に対して強い耐性を持つことが複数の研究によって明らかになっています。
近年、異常気象による野菜の品質低下や収穫量の減少などの被害が増加している中、環境の変化に強い今回の農法は、レジリエントな栽培方法として期待されています。
淡水削減と土地活用に活路を見出した
国際連合の資料によると、農業は世界で最も淡水を消費する分野であり、全取水量の72%を占めていることが事実です。
今後更なる世界人口の増加で淡水の需要は増加し、2030年までに淡水資源が40%不足すると予測されていることから、海水を利用した淡水の削減栽培はカギになるとみられています。
また、世界の土地の16億haが作物栽培に使われている中で、土地に縛られない農業を確立することは、気候変動や食糧危機、さらには政治的問題を解決する上で、とても大きな意義があります。
古代文明は食の供給システムの崩壊したことがきっかけになり、滅亡につながったといわれています。
失われつつある資源を確保するために争いを繰り返すのか、それとも未来のために現状を見極め、最先端の技術を駆使し改善に努めるのか。私たちは今、その判断を迫られているのかもしれません。
引用画像:
https://www.n-ark.jp/technology/
https://aasarchitecture.com/2021/12/floating-farm-green-ocean-by-n-ark/
参考サイト:
気候変動は食料安全保障にも脅威となっている。科学者は異常気象によって農作物の収穫量が減り、2050年には穀物価格は最大23%上昇すると予測する。世界の人口を支える食料システムは維持が難しくなり、紛争の...
海水で育てた野菜が、未来の食料システムを救う?静岡の海に浮かぶ農場「グリーンオーシャン」が、人と植物、両方にとって快適な環境を模索する取り組みとして注目されています。