近年、日本を含め世界中で猛暑や記録的な干ばつ、水害や土砂災害が起きています。特に日本では、猛暑や豪雨、台風による被害は、当たり前のように考える人も少なくないはずです。
とはいえ、気候変動の問題は、地球の未来に大きな影響を与え、私たちの命の安全が保障されるとは限りません。さらに、この問題は、限られた資源の有効活用と密接に関係し、私たちの生活に直結した問題を引き起こしています。
電気が足りない
その問題のひとつに「電力不足」があげられます。電力供給の予備率が3%を切る状況を「電力不足」と呼び、2023年7月の予備率予想は東京電力管内で3.3%程度と、最低限必要な3%をわずかに上回っているに過ぎません。
この背景にあるのは新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴う電力需要の増大や、ロシアに対する経済制裁措置に伴う液化天然ガス(LNG)の供給不足などです。こうした電力不足懸念は2023年以降も続くとみられています。
電力の自由化は負担が大きい
この問題を少しでも解消するために「電力の民主化」が取り上げられることも少なくありません。これは、大手の電力会社に頼るだけでなく、市民が生活に必要な電力を自分で発電できるくらいのシステムを作ることです。
火力を使って発電したり、広大な土地に太陽光パネルや風力タービンを並べて発電したり、といった方法もそのひとつです。
しかし、これらの方法は巨大な資本や莫大な国の予算を必要とし、さらに各家庭で行う場合も費用負担が大きくなる課題があることから、思うように導入が進んでいないことが実情です。
太陽電池を練り込んだ布が登場した
そこで、もっと低い視点で、自然の力を無理なく使い、個々人が”小さな発電所”となり、最低限身の回りの電力をまかなうことができるかもしれない方法が登場しました。
それは、イギリスのノッティンガム・トレント大学の研究者が2022年10月に発表した「太陽電池を織り込んだ布」です。
布には、縦5mm、横1.5mmの太陽電池がたくさん織り込まれており、これを使って服や鞄を作ることができるといいます。
つまり、技術的には、服を着て外を歩くだけで、自分で電気を作ることができるということです。
ノッティンガム・トレント大学は、1,200個の太陽電池が織り込まれていれば、携帯電話やスマートウォッチを充電するのに十分な量の発電ができると発表しています。
太陽電池はシリコン製で、ポリマー樹脂に埋め込まれているため、服を着ていても、太陽電池が付いている感触はしないといいます。さらに通常の洋服と同じように折りたたんだり、洗濯機で洗ったりできるのも実用的です。
昨今の電気代は、異常ともいえるほど高騰しています。東京電力は、2023年6月からの規制料金を平均29.31%上げることを国に申請し、今後も価格の上昇は続くとみられています。
無駄な電気は消すなど、節電を心掛けることも大切ですが、使用料を減らしても、ベースが上がる状況であることから、値下げの効果は期待できません。
太陽光パネルほど費用をかけずに、歩くだけで発電できるこの布は、環境について見つめ直すきっかけにもなり、歩くことで、自身の健康も維持できる、一石二鳥なアイテムなのかもしれません。
引用画像:
https://ideasforgood.jp/2022/11/02/solar-cells-textile/
参考サイト:
イギリスの研究者が、小さい太陽電池がたくさん織り込まれた布を作りました。携帯電話などの充電が可能。自分で電気をつくれる未来が、広がっていきそうです。
Textiles embedded with more than a thousand miniature solar cells - which are capable of charging a smart watch or mobile phone - have been developed by researchers at Nottingham Trent University.
2022年3月以来の電力不足懸念は23年も続く見込みだ。電力供給の余力を示す予備率は7月に東京電力ホールディングス(HD)管内で3.3%と、最低限必要な3%をわずかに上回るにすぎない。東電HDと中部電力が出資するJERAが持つ火力発電所の活用が焦点で、経済産業省は売電先の確保を後押しする。トラブルが起こりやすい老朽火力に頼る綱渡りの構図は変わらない。22年3月に福島県沖の地震で複数の火力発電所