遺伝子の使い分けができると、長生きできる。

医療の発達によって、日本のみならず、世界全体で男性女性ともに平均寿命が伸長し、特に日本では「人生100年時代」といわれています。

寿命が長いほど幸せとは限りませんが、多くの人にとって健康で長く生きられることは理想であるはずです。では、どのようにすれば、病気のリスクを避けつつ、健康に長く生活できるのでしょうか。

エピゲノムは老化の加速や抑制を行う

長寿の中でも、100歳以上の人は「センチナリアン(センテナリアン)」、さらに110歳を超える人たちは「スーパーセンチナリアン」と呼ばれています。

これらの人は、加齢にともなう疾患や認知機能の低下があまりみられないことが特徴で、健康長寿のモデルとして注目を集めています。

そんな彼らの長寿を解明しようと、世界中で研究が行われており、古くから「エピゲノム」がカギを握っているといわれてきました。

「エピゲノム」とは、遺伝子の使い分けを調整するスイッチ的な存在で、外部からの刺激に対処するため、常に情報を書き換えながら体を最適な状態を保つ役割を果たしています。

また、エピゲノムの対応に異常が起きることで、臓器機能が低下したり、ガンを発生させるとみられています。

長寿の人はエピゲノムが若い

そんな中、慶應大学の研究グループは、健康長寿の”大先輩”は、エピゲノム年齢が若い人と同等に保たれていることを突き止めました。エピゲノムによる遺伝子の切り替えは「メチル化」と呼ばれる現象でわかるといいます。

そこで、同グループは、DNAのメチル化が進むと遺伝子の活性が制御され、低下すると活性化するエピゲノムの年齢を推定できる新しい方法を編み出しました。

この方法を使って、101歳から115歳までの94人と、20歳から79歳までの健康な421人のDNAを解析したところ、エピゲノム年齢が、実年齢よりも若いことが明らかになりました。

特に、センチナリアンは、ガンと認知機能に関わる領域のエピゲノムが若いことから、これらの病気に罹患しない理由のひとつだとみられています。

老化した方が良いエピゲノムもある

しかし、全てのDNAのメチル化が低い、つまりエピゲノムが若ければ良いというわけではないことも明らかになりました。それは、TGF-βというタンパク質に関連する領域です。

加齢性疾患には慢性的な炎症が関与しているといわれており、このTGF-βが増加すると多くのガンが悪化することも事実です。つまり、領域によってエピゲノムは、若くない方が良いともみられています。

寿命が延びているのは望ましいことですが、同時に病気やその治療費、介護費用などの新たな問題も発生してることも事実です。

しかし、今後も研究が進み、生活習慣改善や病気の予防方法が提言され、健康長寿の社会が実現することに期待が寄せられています。

引用画像:
https://crest-ihec.jp/public/epigenome_qa.html

参考サイト: