肥満は薬で治す時代になる。

「痩せたいけれど、痩せられない」減量の程度に違いはあっても、誰もが一度はダイエットの壁に突き当たった経験はあるはずです。

痩せるためには、食事制限や運動することが一般的な方法ですが、多くの人にとって体重を減らし、維持することは難しいことが現状です。

また、極端に太っている人はこうした対策をしても目に見えた効果が見えず「肥満症」という病気であるとされ、治療方法が難しいといわれていました。

肥満症は手術しか方法がなかった

病的な肥満症を解消するための「胃バイパス手術」は、持続的な体重減少や糖尿病の寛解をもたらす外科手術として、1970年頃から頻繁に行われてきたといいます。

具体的には、胃を上部の小さな袋と下部の大きな袋に分け、さらに小腸のルートを変える(バイパス)ことで消化吸収を阻害します。

一方で、胃バイパスは術後の合併症などリスクを伴い、誰もが気楽に受けられる手術ではないことから、安全かつ利用しやすい代替案が必要とされていました。

薬でホルモン分泌を調整する

そんな中、アメリカのシラキュース大学とシアトル小児科病院の研究グループは、投与するだけで胃バイパスと同じ持続的な効果が得られる治療薬の開発を進めています。

この治療薬は、胃バイパスの術後に生じる「腸内のホルモン分泌量の変化」を再現することを目的とし、脳に満腹状態であることを知らせて食欲を抑え、血糖値を正常化させる働きがあるとみられています。

脂肪燃焼効果がある

肥満のラットを使った実験を行ったところ、食事量を通常より最大で80%減少させることに成功し、さらに16日間の実験終了時には体重が平均で12%減少したことが明らかになりました。

また、変化したのは食事量の減少だけではありません。運動量や心拍数、体温上昇といったエネルギー消費量の増加にも寄与することから脂肪の燃焼効果が高まるとみられています。

チームは現在、この治療薬の特許申請をしており、次のステップとしてヒトに近い霊長類を用いた臨床試験を予定しています。

今後研究が進み、人体に対しても安全で副作用なく使用できることが確認されれば、肥満や糖尿病は薬で簡単に、楽して治る時代になるのかもしれません。

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