いつかスギ花粉症はなくなる。

季節性アレルギー性鼻炎、いわゆる花粉症。特にこの時期の花粉症を引き起こす原因物質の代表格「スギ花粉」は、多くの人にとって憎たらしい存在であるはずです。

眼球ごと洗いたくなるような目のかゆみに、やる気や集中力を削がれるくしゃみや鼻水で苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。

そんな中、政府主導で花粉症の一原因物質である「スギ花粉」を減らす取り組みが行われています。

花粉を出さないスギを植え始めた

林野庁は2007年に「花粉発生源対策プロジェクトチーム」を立ち上げ、スギを伐採した後に植林する「花粉症対策スギ」の苗木の供給量を大幅に拡大に取り組んでいます。

まったく花粉を出さない無花粉スギ(2016年度現在3品種)と、普通のスギの1%以下しか花粉を飛散させない少花粉スギ(同142品種)を植林することで、花粉症を低減させる狙いがあるといいます。

植替えには700年かかる

1992年に富山県の神社で偶然発見された無花粉スギを研究したところ、スギの中には無花粉の遺伝子を持つものが一定の割合で存在し、同遺伝子同士を人工交配させると、無花粉スギが生まれることがわかりました。

この特性を利用し、無花粉の性質を持ち、より林業に適した品種の開発が行われた結果、日本のスギ苗木生産量に無花粉スギが占める割合は約半数を占めています。

国は、2032年度までにその割合を70%にすることを目指していますが、スギの人工林は全国に約450万haあり、すべての杉林を花粉症対策スギに転換するには700年以上かかるとの見方もされています。

雄花を枯らす方法も進められている

花粉症対策としてのスギへの植え替えは年月がかかりすぎるため、別の対策も考えられています。それは、スギ雄花を枯死させるカビの一種(スギ黒点病菌)を散布し、花粉の飛散を抑えようという世界初の取り組みです。

林野庁プロジェクトチームが試験的に散布したところ、懸念されていたスギの生育には影響せず、2ヵ月〜3ヵ月で約80%以上の雄花を枯死させることに成功しました。

まだ実験段階で開発に時間はかかるとみられますが、スギ黒点病菌を大量培養する技術を開発し、安全性を確認できれば、植替えと同時に新たな花粉対策として実用化されると期待されています。

日本には、自然豊かな山林があり、その一部に人の営みがあります。そして世界の環境を守る上でも、日本の恵みを持続可能な形で活用していくことが重要です。

しかし、日本人の40%が花粉症に苦しんでいるといわれている今、花粉の飛散を抑えて、花粉症を軽減できる取り組みには大きな期待が寄せられています。

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