キノコで電子回路を作る。

スマホやパソコン、冷蔵庫、エアコンなど、毎日使う電子機器は、私たちの生活になくてはならない、日常の一部としてその存在を確立しています。

しかし、その寿命は限られており、壊れると大半は廃棄されるのが実情です。その理由の1つにあるのが電子機器に使われている、電子回路の”材料”にあるとみられています。

毎年5,000万トンが廃棄されている

多くの電子機器に使われている電子回路は、絶縁および冷却性に優れた「プリント基盤」の上に配置されており、そのほとんどが通電性の金属で作られています。

しかし、基板はプラスチックポリマー製のため、リサイクルができず、チップの寿命が尽きるとそのまま廃棄されているといいます。これは、年間5,000万トンの電子廃棄物を排出する一因で、大きな問題になっています。

キノコは伝導性能に優れている

そこで、オーストリアのヨハネス・ケプラー大学は、この問題を解決するために朽木に生えるキノコ「霊芝」を使用し、基盤を作る研究を行いました。

その結果、キノコの特徴である細菌から菌糸体を守るために形成される皮は、柔軟で絶縁性が高く、200℃以上の温度にも耐える紙ほどの厚さのシートになることが明らかになりました。

さらに、標準的なプラスチックポリマーとほぼ同じ伝導性能を発揮することも確認され、電子回路の基板に適していることがわかりました。

循環型社会の実現にも貢献する

霊芝の皮は、湿気や紫外線への対策を講じていれば何百年以上も耐えることはでき、電子機器より先にダメになることはないとみられています。また、2,000回折り曲げても使用できることから、長持ちするといいます。

その一方で、土壌では約2週間で分解される生分解性を持つことで、簡単にリサイクルできる点にも優れています。

キノコ基盤は「ウェアラブルセンサー」や「無線タグ」のような長期稼働を前提としない電子機器での使用が期待されています。

また、別の企業ではキノコの菌糸体を牛革のように加工したキノコレザーグッズの商品化も進んでいます。キノコが、持続可能な社会の一翼を担う時代はもうそこまでやってきているのかもしれません。

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