豆が要らないコーヒーができる。

世界は今、資源不足や環境問題、格差や分断などさまざまな問題に直面しています。こうした問題が未解決のまま積み重なっていく現状を作り出している一因は、急激な変化に社会の仕組みが対応できていないことだと考えられます。

そして、2050年、世界の人口は100億人に達し、人類は大きな節目を迎えますが、現在抱えている課題の多くはさらに深刻さを増す見方をされています。

コーヒーの産地が減少する

そんな中、毎日何気なく飲んでいるコーヒーも例外ではなく、世界から消え去るのも、時間の問題かもしれないといわれています。

米州開発銀行は、気候変動による気温上昇や干ばつで、2050年までにコーヒー豆の生産に適した土地が約50%減少すると予測しています。

特に、世界で流通しているコーヒー豆で最も良く飲まれる品種であるアラビカ種への影響が大きいとみられています。

強制労働などコーヒー豆生産者への人権侵害も深刻であるものの、世界では約1億2,500万人が生計をコーヒーに依存しており、コーヒー農家への影響も懸念されています。

持続可能な栽培方法を模索している

こうした危機的状況を変えるべく、スイスの食品大手ネスレは、2030年までに50%のコーヒー豆を「環境再生型農業」で栽培されたものから調達するというゴールを設定しています。

環境再生型農業とは、土壌を修復・改善させる農法で、炭素を土の中に蓄えることによって大気中のCO2を減少させる効果があるとされています。

さらに健全な土壌は気候変動の影響に強く、収穫量の増加も期待できることから、農地の減少にも対抗できると期待されています。

豆を使わないコーヒーを開発している

何とかコーヒー豆の生産性を維持しようと栽培方法を変える取り組みが行われている中「コーヒー豆に頼らない」新しいコーヒーの開発も行われています。

アメリカ・カリフォルニアに本社を置くベンチャー企業「Compound Foods」は、食品科学と発酵技術、そして微生物を使用した製法でコーヒーを再現する研究を進めています。

豆を使わないコーヒーは、炭素の排出量を従来に比べて90%削減することに加え、通常カップ1杯のコーヒーを作るために必要な140ℓを大幅に削減する効果があるとみられています。

家庭外でのコーヒー消費人口の増加や急激な都市化により、コーヒー需要は拡大し、2025年までに市場規模が1,446億ドルに達すると見込まれています。

豆が要らないコーヒーの味の想像はつきませんが、急激な需要の拡大と、環境問題に敏感な状況が後押しし、案外すんなり受け入れられるのかもしれません。

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