プラスチック原料用の米栽培が始まる。

日々テレビや雑誌で取り上げられる環境問題。中でも、プラスチックの問題は深刻で、食物連鎖を通じて人間の体内に蓄積していることも明らかになっています。

プラスチックは人間の生活を便利で豊かにしてきた反面、石油資源から作られることから、いつまで経っても分解されず、焼却によってCO2を排出し、地球温暖化の原因になるなど、環境への影響が多大です。

そんな中、環境保護の観点のみならず、日本の農業の課題解決の切り札になるプラスチックの新しい素材が提案され、注目を集めています。

米素材のプラスチックが開発された

東京に本社を置くバイオマスレジンホールディングスは、米を原料とした新しいプラスチック素材「ライスレジン」を開発し、商品化を進めています。

ライスレジンとは、その名の通り米を配合したプラスチックで、米の配合比率が30%程度から最大70%まで、いくつか種類があります。

これを石油と混ぜることで、石油由来のプラスチックと同様の製品を作ることができ、配合率を変えることであらゆる形への展開が可能だといいます。

現状、使用後は焼却する方法しかない

ライスレジンの開発は、アメリカの企業が行っていた廃棄される魚から油を搾り、製品化することから着想を得たといいます。

そこで廃棄されるものや余っているものに価値を見出す方針をたて、当時から消費量が減少して、余剰在庫が出ていた日本ならではの米を採用しました。

さらに原料である米をはじめとした植物は、生育段階でCO2を排出せず、カーボンニュートラルな素材で環境への貢献が実現します。

このようなエコな観点が重要視される現在、ライスレジンはレジ袋のほか、飲食容器に使われています。しかし、最終的にはゴミとして焼却されるプラスチックに変わりはなく、使用後の処理方法が課題とされています。

自然分解ゆえに商品化の障壁がある

そんな中、同社は焼却を必要としない生分解性プラスチック製品「ネオリザ」の開発を進めています。

ネオリザは、条件が整えば、1ヵ月~2ヵ月で分解され、土に還すことができる特徴をもち、埋立地の限界が近づきつつある日本においても非常に期待されています。

しかし、分解に欠かせないバクテリアは、気温が低いと動きが鈍くなり、場所や季節など条件による振れ幅が大きく、安定しないことが課題だといいます。

特に日本のメーカーは商品に求める基準が厳格であるため、条件によって効果に差が出る製品は、品質の保証をできないという理由で、市場展開は難しいとみられています。

稲作の肥料に活路を見出した

展開に苦戦していたネオリザですが、稲作に使われる化学肥料のコーティング材料に、ネオリザを使うことに活路を見出し始めています。

稲作は水田に化学肥料をまくため、水の中に溶けたプラスチック製の皮膜が、そのまま海に流出していることが現状です。

しかし、時間がかかっても必ず土に還るネオリザに置き換えることで、海洋プラスチック問題を大きく改善できると期待されています。

さらに同社では、プラスチックの素材に使う米を確保するために、全国にある耕作放棄地を活用し、米の栽培を始めています。

日本における米の年間消費量は減少していることは事実です。しかし、食用以外で米の活路が見出された今、日本の田園風景が守られることに希望が見え、農業の未来も拓かれるのかもしれません。

引用画像:
https://ja.nc-net.or.jp/company/93266/product/detail/77431/
https://www.fsrt.jp/now/no1/5618.html

参考サイト: