アメリカでは現在92基の原子炉が稼働することで、電力の20%をまかない、人々の生活を支えているといわれています。
しかし、これら発電所の多くは半世紀以上にわたって稼働しており、老朽化した原子炉をどう処理するのか議論が始まっています。
こうした現状に対し、全米のすべての原子力発電所が停止を想定した場合の驚くべき結果が明らかになり、話題を呼んでいます。
年5,200人の公害関連死が予想される
マサチューセッツ工科大学の研究チームによると、原子力発電所を停止させた場合、電力需要を補うために石炭、ガス、石油の使用量が増加し、大気汚染が加速することが明らかになりました。
さらに、この予測を数値化したところ、大気汚染の増加は深刻な健康被害をもたらし、1年間で5,200人の公害関連死が増える可能性があるとみられています。
代替エネルギーの効果も薄い
そんな中、各国で太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの採用が活発化しており、既存の発電方法に替われば、ある程度大気汚染を抑制することができると推測されています。
しかし、こうした発電方法を2030年までに最大限使用した場合でも、1年間で260人の公害関連死が発生するとみられ、そこまでの効果を見込むことができません。
脱原発で石炭の使用が加速する
事故や燃料採掘による局所的なリスクに集中される脱原発の流れは、昨今、多くの国で始まっていますが、代替手段として稼働する化石燃料工場からの大気汚染について考える必要もあります。
実際に、1985年アメリカのテネシーバレー原子炉、2012年にはカリフォルニア原発の閉鎖によって石炭の使用量が急増し、有害物質の暴露が問題になったことも事実です。
原発をはじめとするエネルギー政策について、それぞれの立場で意見がありますが、安易な脱原発は、かえって国家の安全と国民生活を破壊する事態にもなりかねないことを十分に考慮する必要があるのかもしれません。
参考サイト:
An MIT study shows that if U.S. nuclear power plants are retired, the burning of coal, oil, and natural gas to fill the energy gap could cause more than 5,000 premature deaths.