多くの親は、長時間のゲームが子供に悪影響を与えると考えています。
アメリカの小児科学会のガイドラインでは、「年長児のゲーム時間を2時間以内に収めること」を推奨しています。
「ゲームのやりすぎ」は、子供に悪影響を与えると考えられているのです。過去の研究結果でも、長時間のゲームによる悪影響を扱った論文が存在します。
しかし、これらの研究のサンプルは80人未満と非常に少なく、神経生物学的なメカニズムを解明するまでには至っていません。本当に悪影響を及ぼすのでしょうか?
ゲームは非常に複雑なパズルのようなものです。よって、プレイすること自体が、何か特定の能力に対して、プラスの影響をもたらす可能性も十分に考えられます。
そこでアメリカのバーモント大学に所属する精神医学者バダー・チャラン氏ら研究チームは、ゲームを長時間遊ぶ子どもたちに見られるプラスの影響について、調査と解析を行いました。
その結果、1日3時間以上ゲームをする子供が認知スキルテストで好成績を収めたと、2022年10月24日付の学術誌『JAMA Network Open』に報告をしました。
どんな実験を行ったのか?
米国小児科学会のガイドラインから、長時間のゲームには、デメリットしかないのでしょうか?
これに疑問を持ち、チャラン氏ら研究チームは、9~10歳の2217人の子供たちを対象に、脳機能における認知スキルのテストを行いました。
テストに参加した子供たちは、1回で3時間以上ゲームをするグループと、ゲームを全くしないグループの2つに分けます。そしてグループごとに2つのテストを実施しました。
1つめのテストは、画面に表示された矢印を見てから、できるだけ早く同じ方向のボタンを押す、というもの。
その際、「ストップ」という合図があった場合には、何も押してはいけないというルールもあり、衝動をどれだけ制御できるかを測定しました。
2つめのテストでは、最初に見た人間の顔と後から見せられた絵が一致するかを質問しました。
これにより、情報を記憶する能力が測定されます。テスト中、子供たちの脳をfMRIでスキャンし、それぞれの脳内での活動を確認しました。
これらをまとめた結果、3時間以上ゲームをするグループは、全くしないグループに比べて、2つの課題をより早く、より正確に処理できていると判明。
またこのスキルの差は、脳活動でも同様でした。ゲームをするグループは、ゲームをしていないグループよりも、注意と記憶に関連する脳領域で高い脳活動を示していたのです。
研究チームは、「ビデオゲームが脳の機能を上げるトレーニングにつながった」と推測しています。
ディスプレイを見続けるのは気をつけろ!
今回の研究では因果関係を完璧に分析することはできていません。
ゲームのジャンルによっては、認知スキルの発達の仕方に差があると考えられるため、「とりあえず長時間ゲームをすればよい」というわけでもありません。
毎日3時間以上行うのも時間の無駄です。ストレス解消の手段として、一時的に3時間のゲームをしている子どもを選んだ上での今回の研究結果です。
チャラン氏も「ディスプレイを過剰に長く見続けることは、精神的にも身体的にも悪影響を与えます」と述べています。
しかし今回の結果は、バランスを保ちつつ長めにゲームをすることには、確かなメリットが存在することを明らかにしました。
現代では、子どもでも大人でも、長時間ディスプレイを見続ける生活は当たり前になりつつあります。
このため、ゲームのもたらす影響は、デメリットよりメリットの方が大きいかもしれません。
この研究は、子供の成長をより良くするために、重要な研究発表と言えます。これに続く研究結果が、どんどん発表されることに期待しましょう。
参考サイト
米バーモント大はゲームをしない子供と1日3時間以上する子供の認知スキルテストを実施。結果プレイ時間の長い子が好成績だった。悪影響ばかり着目されますが良い影響にも目を向けるべきかもしれません
This case-control study of children who played and did not play video games examined whether video gaming had a beneficial or detrimental association with cognitive abilities.
ハードコアゲーマーには、常人とは違う優れた能力があることが明らかになりました。 これは米国土安全保障省と米
Action video game playing has been experimentally linked to a number of perceptual and cognitive improvements. These benefits are captured through a wide range of psychometric tasks and have led to the proposition that action video game experience may promote the ability to extract statistical evidence from sensory stimuli. Such an advantage could arise from a number of possible mechanisms: improvements in visual sensitivity, enhancements in the capacity or duration for which information is retained in visual memory, or higher-level strategic use of information for decision making. The present study measured the capacity and time course of visual sensory memory using a partial report performance task as a means to distinguish between these three possible mechanisms. Sensitivity measures and parameter estimates that describe sensory memory capacity and the rate of memory decay were compared between individuals who reported high evels and low levels of action video game experience. Our results revealed a uniform increase in partial report accuracy at all stimulus-to-cue delays for action video game players but no difference in the rate or time course of the memory decay. The present findings suggest that action video game playing may be related to enhancements in the initial sensitivity to visual stimuli, but not to a greater retention of information in iconic memory buffers.