近視は幼少期の点眼で予防できる。

物をはっきり見ることができる、つまり、目の健康を維持することは、どのような活動をする場合でも欠かせないことです。

しかし、目の調整力は一般的に30代後半から衰え始めるといわれ、ピントが合わず見えにくかったり、視界がかすむ症状は「老化現象」として、仕方がないことだと考えられてきました。

そんな中、近年世界的に早い時期から視力の低下が叫ばれ、年々視力に悩む人は増加し、近い将来多くの人が裸眼で物を見ることができなくなるとみられています。

世界の半数が近視になる

オーストラリアのブライアン・ホールデン視覚研究所の推計によると、2000年時点では世界人口の22.9%に当たる約14億人が近視を発症し、うち1億6,000万人が強度の近視であることが明らかになっています。

今後はさらに増加し、2050年には世界人口の49.8%に当たる47億6,000万人が近視となり、中でも9億4,000万人が強度の近視になるという世界規模の社会問題に発展することが予想されています。

近視になると視力回復しない

近視の発症には遺伝が関係するといわれていますが、爆発的な拡大は、勉強や娯楽、日常生活のほとんどでスマホやパソコンなどを使用し、近くを見続けていることが原因です。

近視は子供時代に始まることが多く、一度近視になると、その後視力が回復することはほとんどないため、現代の子どもたちはこれらの影響を強く受けているといわれています。

子供の頃に目が悪くなりやすいのは、眼球の成長と関係があり、特に12歳までの眼球の成長は著しく、その期間で近くばかり見ていると、眼球が前後に長くなることでピントが合わなくなり、近視を発症するといわれています。

1日1回の点眼で効果がある

この状況を改善しようと、最近では、副交感神経に働いて緊張を緩和したり、ピント調整をする筋肉を休ませる効果がある「アトロピン点眼薬」を用いる方法が提唱されています。

香港中文大学(CUHK)に所属する眼科医ジェイソン・ヤム氏ら研究チームは、近視ではない4歳~9歳の子ども353人に濃度の異なる点眼薬をさし、近視の発症状況を調査しました。

その結果、2年間、1日1回の頻度で0.05%濃度の点眼を続けた子供たちは、近視になる確率が低くなることが明らかになりました。

近視抑制治療は眼球が成長する時期を考慮すると、一生点眼を続ける必要はなく、特に視力が悪化しやすい子供時代の使用だけの予防薬として十分に効果を発揮すると考えられています。

今回の実験は、香港のみで行われたため、より正確な結論を出し、実用化するためには多様な人種や異なる環境で研究を続ける必要があるといいます。

これまで提唱されてきたブルーベリーを食べたり、サプリメントを摂取する方法は視力が悪くなってからの対策であり、目が悪くなることを仕方がないと諦めてきたといっても過言ではありません。

しかし、この研究が進み、幼少期からの予防が目薬1滴で実現できれば、視力低下の社会問題を食い止める希望になるのかもしれません。

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