ポプラ並木は綿花農場になる。

衣服素材として私たちにとって身近な存在の「コットン」。その原料は、植物由来の製品「綿花」であることから、環境に優しいイメージがあるかもしれません。

しかし、その製造過程では、大量の水と土地が必要とされることから、環境問題が懸念されています。そんな中、”ある植物”が、救世主になることがわかりました。

ポプラから綿が取れる

その救世主とは「ポプラ」別名、セイヨウハコヤナギです。高さは20~30メートルほどになる落葉紅葉樹で、遠くからは背の高いホウキのような形に見える樹木です。

ポプラは、葉が展開する前の4月〜5月に開花し、5月〜6月頃、実が成熟した後、果皮が割れ、中から白い綿毛が飛び出てくる特徴があります。

循環型社会を実現する

そこで、スウェーデン農業科学大学などの研究者は、この綿毛を利用できないかと、ポプラから布を作ることを提案しました。

ポプラは綿花ほど多くの肥料や化学物質、水を使わなくても育つ特徴があります。急速に成長するポプラの木は、二酸化炭素を早く蓄積でき、脱炭素に貢献する上、セルロースの優れた供給源だといわれています。

最近ではビスコースやリヨセルなど、木材のセルロースから製造される繊維は、いわば「持続可能な繊維」であり、需要が高まっています。

また、セルロースを繊維に加工した後に残る50%の木材(枝や樹皮)から副産物として油を抽出することもできます。それを使用し、発電用バイオ燃料も作ることができるため、循環型社会の実現が期待されています。

食料問題に貢献する

さらにコットンを育てる農地を、食料生産のために使えるようになります。世界的な人口増加や気候変動など、さまざまな要因によって食料供給に影響が及ぶと考えられる中、食料生産の増大を図れることはメリットです。

そこで、研究者たちは、農業生産性が低い特徴を持つ「マージナルランド(限界土地)」でポプラを育てることを想定しています。つまり、他の用途で使える土地を開拓し、繊維の生産のためだけに使うことはないということです。

その結果、バルト海地域の460万ヘクタールの土地でポプラを育てる場合、これまでコットンを生産していたバルト海地域の土地の42%を、他の用途に転用できるとみられています。

農地に作物を植えれば、アグロフォレストリー(森林農法)を実現し、衣料用セルロースの生産量も増やすことができ、一石二鳥です。

北海道では、開拓時代に防風・防雪対策として、ポプラが植えられたことから、まるで”シンボル”ともいえる風景が広がっています。

さらに、その綿毛が地面を真っ白に埋め尽くし、柔らかな雲のカーペットが敷かれている光景は「初夏の風物詩」ともいわれています。こうした何気ない日常の光景から、布が作られる未来がやってくるのかもしれません。

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