ハンガリーは異次元の政策で少子化を解決した。

世界15の経済大国における女性の平均的な出産人数は、長期的な人口維持に必要な数字を下回り、歴史上初めての低水準を記録しました。

またヨーロッパでは、1970年代に多くの国で出生率が人口置換水準(人口が増減せず均衡した状態になる出生率)を下回って以降、欧州諸国の出生率は伸び悩んだまま、現在に至ることも事実です。

そんな中、中東欧のEU加盟国ハンガリーは「すごい」少子化対策を打ち出し、この状況を大きく改善しています。

GDPの約6%を少子化対策に充てた

東ヨーロッパ中央部に位置するハンガリーでは1981年以降、人口の減少に歯止めがかからず、2011年までの30年で人口の1割にあたる100万人が減少し、出生率も1.23と、当時のEUで最低を記録しました。

この状況を打開するべく現政権は、大胆な少子化対策を次々と打ち出し、今ではGDPの5%〜6%を少子化政策のために使っています。

その結果、20歳〜39歳の女性人口が過去10年で約28万人減少したにもかかわらず、2021年の出生数は2010年より約3%増加し、また出生率も1.59と、高い水準を記録しています。

3人産むとローンが帳消しになる

政府は、子どもを産んだことによる家計への影響を最小限にとどめるため、独自の支援をしています。例えば、妻の年齢が18歳〜40歳までの夫婦は、国から約350万円を途の縛りなく、無利子でローンを組むことができます。

返済期間は最大20年で、最初の5年間に第1子を出産すると、返済が3年間猶予され、さらに第2子を出産すると、返済が3年間猶予される上、元本の3割が帳消しにされます。

また、第3子を出産するとローン残高のすべてが返済免除となり、理論上は、3年ごとに子どもを3人産むと借金がゼロになります。

4人産むと所得税が免除される

元々、ハンガリーの消費税は27%とEU諸国の中でも最高レベルに高く、代わりに所得税は一律15%と低いことが特徴です。

しかし、さらに若者の経済的負担を軽減しようと、2022年から25歳未満の若者は男女関係なく、所得税が免除されています。

また、2023年からは満30歳の誕生日を迎える前に子どもを持った母親は、30歳になった年の12月末までは所得税が免除され、この措置には「若いうちに子どもを産んでほしい」という政府のメッセージが込められています。

祖父母にも育児手当が支給される

ハンガリーでは子どもが生まれると、両親のどちらかに「育児手当」が給付されますが、近年は長い期間仕事を休む人は減少傾向にあるといいます。

そこで、両親が職場復帰した後は、孫が2歳になるまで家庭で孫の面倒を見る祖父母に、育児手当が支給される制度が設けられています。

条件は、母親が正規労働者で医療社会保険料を納付していることや賃金の上限など定められていますが、約85,000円が毎月支給されます。

現役を引退した世代にとって、孫との時間は唯一無二であることに違いありません。しかし、体力的に決して楽ではないことから、手当の支給は祖父母にとっても”メリット”になるとみられています。

移民に頼らない人口増加を目指す

これまで多くのEU諸国は、移民を受け入れることで、人口を増やし、労働力を増やしてきた反面、その国の人口動態を変えてしまう可能性にはある程度目を瞑ってきたといわれています。

しかし、ハンガリーは国民が国内に残り、子供を産み、移民をなるべく受け入れない”自国民を守る方針”を貫き、ようやくその成果が身を結び始めています。

日本では、2023年早々に岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を行うことを表明し、児童手当などの支援拡充や予算規模よりも社会の雰囲気づくりを重視する姿勢をみせています。

しかし、政府の提案は、いい意味で”非常識”なものではなく、従来の政策と変わりばえのしないものであるとの見方をされていることも事実です。

“異次元”と唱え、本気で少子化を解決するのであれば、支援の範囲や金額を変える表面的な意識改革を目指すのではなく、ハンガリーのように、若者に焦点を当てた大胆な施策を行うべきなのかもしれません。

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