近年、世界の食糧危機の観点から、代替タンパク質として昆虫食が注目されていることは多くの人が知っているのではないでしょうか。
最近だと欧州委員会は2022年の2月、ゴミムシダマシの幼虫、イナゴに続きコオロギを3番目の「新規食品(Novel Food)」として正式に承認しています。
そんな食べられる昆虫ですが、今回は昆虫にまつわる新しい取り組みを紹介します。それは『サイボーグ昆虫』です。
理化学研究所(理研)などの研究グループが生きたゴキブリに装置などを取り付け「サイボーグ昆虫」を開発したと発表しました。
昆虫の運動能力を損なわずに電池の充電や無線操作ができるのが特徴だといいます。
研究グループは、将来的には災害現場での調査や環境モニタリングなどに幅広く活用できると期待しています。
昆虫などの生物と機械を融合してサイボーグ化するためには充電可能な電池や人間の操作を受ける無線通信装置が必要で、いずれも小さいことが条件だと言います。
災害現場でサイボーグ昆虫を活用する
また、生物の体長に比べて大きな装置を装着すると生物の動きが鈍くなるため、操作しやすい比較的小さな生物を選び、その生物の活動を制限しない精緻な装置の開発が不可欠でした。
サイボーグ昆虫は機械化した関節を動かす昆虫型ロボットより消費電力が少なく済むためです。
災害現場などで活用できるサイボーグ昆虫の開発を計画した福田専任研究員らの研究グループは、体長約6センチのマダガスカルゴキブリに着目しました。
ゴキブリはカブトムシやバッタのような昆虫より寿命が長く、環境に対する耐性も比較的高い。
特にマダガスカルゴキブリは体長が大きく、羽がなく飛べないために扱いやすく、寿命も2年以上あるとされます。
動きの自由度を実現する工夫により、装置のゴキブリ背側への装着は1カ月維持できたといいます。
研究グループは開発したサイボーグ昆虫の右側の尾葉に取り付けた電極に無線装置を通じて電流を通した。
するとサイボーグ昆虫は電流による刺激により右方向に曲がり、無線により動きを操作、制御できることを確認できました。疑似太陽光による約30分間の充電で約2分間の操作が可能だったという。
福田専任研究員ら研究グループによると、ゴキブリのような腹部の変形は他の多くの昆虫にもみられることから、今回開発したサイボーグ昆虫作製の手法は他の昆虫にも応用できるという。
また充電することで昆虫の寿命が続く限り長時間、長距離の操作が可能。
開発したのはプロトタイプです。
しかし、今後センサーやカメラを搭載するなど工夫、改良することにより人間が入り込めない災害現場の調査や環境モニタリング、危険地域の検査などでの活用を期待しています。
食料危機や災害現場で昆虫に救われる日が近いかもしれません。
引用画像:
By Wikimedia Commons
参考サイト:
欧州委員会が、ゴミムシダマシの幼虫、イナゴに続きコオロギを3番目の「新しい食物(Novel Food)」として正式に承認しました。世界で拡大する代替肉や昆虫食が進む背景は?
生きたゴキブリに極薄の太陽電池や無線通信装置を背負わせた「サイボーグ昆虫」を開発した、と理化学研究所などの研究グループが発表した。昆虫の運動能力を損なわずに電池の充電や無線操作ができるのが特徴だという。