今年の冬も時折大寒波が襲来し、厳しい寒さが続いている日本列島。同時に、積雪による高速道路の通行止めや列車の運休などの被害が発生し、人々を悩ませています。
さらに、積雪が多い地域では、住民の高齢化、過疎化によって年々住民や自治体の雪かきに関わるさまざまな負担が大きくなっているとみられています。
年々除雪費用の負担が増えている
全国有数の豪雪地帯でもある青森県は除雪に年間莫大な費用を投じ、冬季の道路確保のため、除雪車とトラックで雪を集め、海に捨てているといいます。
こうした除排雪にかかる負担は年々拡大し、同県では、今年度の経費が271.1億円に上ると推計しています。豪雪だった昨年度の226.5億円を上回り、過去最大規模になる見通しで、費用の負担が大きな課題だといいます。
捨てていた雪をエネルギーに転換する
そんな中、IT企業「フォルテ」と、熱工学が専門の電気通信大学のチームが、降り積もった雪を捨てずに活用できる方法を模索し、雪で発電する実験を計画しています。
豪雪地帯の青森市で行われる実験では、廃校になった学校のプールに雪を集積し、張り巡らした伝熱管を通して得た低い温度と、太陽光などから得られた温かい温度の差を利用して発電を行う計画です。
1kgのガソリンを燃焼させた時に発生するエネルギーを同量作るのに必要な雪は、25mプール(300㎥)換算で0.07杯分程度、プール47杯分で1人あたりの年間消費電力を確保できると試算されています。
捨てていた雪を利用する、つまり”リサイクルする”画期的な方法とはいえ、雪の降るシーズンは限られており、どのくらい効率的に発電できるかが将来的な発電技術確立に向けた課題だとみられています。
温度差を利用した発電は海でもできる
同じ原理、温度差を利用する発電を巡っては、商船三井が海の表面と深層の温度差を利用する海洋温度差発電の実用化を目指しています。
2025年までに1kw時あたりの発電コスト20円程度を目標に置き、経済産業省の試算値で比較すると、2030年時点では洋上風力や石油火力より安くなると見込まれています。
積雪発電は海洋温度差発電より、大きな温度差を活用できるため、今後技術とノウハウが確立すれば、大幅にコストを削減できるかもしれません。
長年、雪国が悩まされてきた「除雪の大変さ」「除雪の費用がかかる」というデメリットを、逆手にとって活用する新しい発電にますます期待が寄せられています。
参考サイト:
1月末に大寒波が襲来し、連日の厳しい寒さが続いている日本列島。この時期、寒さと同じく人々を悩ませるのが大量に降った「雪」だ。そんななか、平均積雪量80〜90cmにものぼる全国屈指の豪雪地帯・青森県青森市で、雪を利用したユニークな「発電」の実証実験がおこなわれる。
電気通信大学と青森市、スタートアップ企業のフォルテ(青森市)は「積雪発電」の実証実験を始める。雪と太陽熱などとの温度差を利用してタービンを回す仕組みで、廃校となった学校のプールで12月から実施する。発電効率は太陽光発電に匹敵するとみており、発電技術の確立を目指す。電通大の榎木光治准教授が開発した発電システムは、プール内の伝熱管を雪で冷やし、太陽光の熱を取り込んだ冷媒に冷気を送って内部で対流を発
この冬の大雪で、除排雪にかかる負担が例年になく大きくなっている。青森県は、3月までに県と市町村でかかる経費が271・1億円に上ると推計。豪雪だった昨年度の226・5億円を上回り、過去最大規模になる見…
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