都市型農業は自給率を上げる。

2022年6月、世界的な飼料不足を背景に、マレーシアではコストや生産状況が安定するまで鶏肉の輸出を停止する方針を打ち出しました。

その打撃を大きく受けたのが、隣国・シンガポールです。同国では鶏肉の約3分の1をマレーシアから輸入していたため、国内は一時深刻な鶏肉不足に陥ったといわれています。

さらに東京23区と同等ほどの国土しかないため耕地面積も少なく、野菜や米はもちろん、鶏肉や豚肉、魚まで、あらゆる食料供給を輸入に頼っており、国内の栄養需要の約10分の1しか自給できていないのが現状です。

今回の混乱は、シンガポールの脆弱性を改めて浮き彫りにしたといえますが、この状況を打破しようと、未来の農業の概念を変えるかもしれない、あるプロジェクトが進行しています。

10年間で食糧生産を3倍にする

シンガポールでは、テクノロジーを駆使することで、2030年までに国の栄養需要の30%を自国で生み出し、それによって輸入への依存度を減らすことを目的とする「30×30計画」に着手しています。

10年間で食料生産を現在の3倍にする、というのは高すぎる目標に感じられるかもしれませんが、シンガポール政府は30×30計画の達成に向けたアクションを次々に実行しています。

ビルの中で垂直農法を行う

政府は食料生産分野への資金援助に力を入れ、資金援助を受けたスタートアップが誕生しています。そのひとつが、ビルの室内でプランターを垂直に積み上げ、狭い面積で作物を効率的に栽培する「垂直農法」を用いた農場経営です。

農場では、24時間稼働する最新の技術を導入することで湿度や温度、植物の成長に必要な光量のデータを収集し、野菜の”健康状態”をテクノロジーが管理しています。

こうした栽培方法の拡大は、国土面積や耕作面積が狭い都市というデメリットを味方につけたものであると同時に、室内での栽培のため天候に左右されず長期的に安定した食物の供給を実現すると期待されています。

政府が国民に家庭菜園を推奨する

さらに、政府が各家庭に野菜の種を配布し、家庭菜園で自分たちが消費する野菜だけでも栽培する、ある種の”自給自足“を推奨する斬新な取り組みを行っています。

土地が乏しいシンガポールでは、持てる生活空間の全てをフル活用しているため、新たに菜園環境を確保するのは非常に困難だといいます。

しかし、自然光が入る狭い屋上の庭や、マンションの共有緑地を活用することでその活動が活性化し、今では家庭菜園を楽しむ人も増加しているとみられています。

世界的な供給網の混乱が及ぼす影響は、シンガポール以外の国々にとっても他人事ではありません。中でも、日本はカロリーベースの食料自給率は40%に満たず、食料の多くを輸入に頼っている状況が続いています。

ピンチをチャンスに変えつつあるシンガポールに続き、日本でも”政府”が画期的な取り組みを主導してくれることに期待をしたいものです。

引用画像:
https://www.straitstimes.com/singapore/rc-concerned-over-gardener-giving-medical-tips-along-with-herbs-6-things-to-know-about

参考サイト: