サウジアラビアは脱石油に舵を切る。

COPは、『締約国会議(Conference of the Parties)』の略で、「気候変動枠組条約」の加盟国が、地球温暖化を防ぐための枠組みを議論する国際会議です。

1995年から始まった取り組みで、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って中止された2020年を除き、毎年開催されてきました。

最終的な目標は、地球温暖化の防止のために大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることです。

今年は11月6日から8日にエジプトが主催国となりCOP27が行われました。

そしてなんと2023年に開催される第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の開催国にはアラブ首長国連邦(UAE)が選ばれたのです。

UAEは、今年11月6日から8日にエジプトで行われたcop27には参加国中で最多となる1000人超の代表団を率いて現地入りしました。

産油国であるUAEはここで脱炭素に向けた取り組みをアピールしました。温室効果ガスの主要排出源の一つとして石油への風当たりが強まる中、COPをイメージ改善の機会したい考えです。

UAEの熱意は、石油国家であるにも関わらず、環境問題に関する主要なグローバルパートナーとして自らを表現したいという願望を物語っています。

サウジアラビアは、水素産出国をめざす

もともとサウジアラビアは世界を代表する産油国です。

莫大なオイルマネーをもとにして、医療や教育、福祉も多くが無償にし、税金も日本より格段に低くしてきました。

しかしその国家運営の土台が揺らいできたのです。

サウジアラビアの財政収支は2014年以降、赤字が続いています。

サウジアラビアには、日本でいう消費税が存在しませんでしたが、2018年から、それに該当するVAT(付加価値税)を5%で導入しました。

しかし財政難に歯止めがかからず、2020年には15%へと引き上げられました。

また、サウジアラビア国籍を持つ人に対しては、従来、電気代や水道代にも潤沢な補助金が投入され国民の負担額は抑えられていました。

それらの補助金も、この数年で削減されているといいます。

財政赤字の要因となっているのは、世界的な脱・石油の動きです。

イギリスのエネルギー企業・BP社が出した2020年のレポートによると、石油の世界的需要はすでにピークを過ぎ、今後は下降の一途をたどると分析しています。

状況によっては、2050年時点で現在の4分の1ほどにまで縮小する可能性も指摘しているのです。

そこでサウジアラビアは、石油依存から脱却する動きをスタートさせました。それは、石油に代わる再生可能エネルギー「水素」の産出先進国になることです。

2017年、ムハンマド皇太子は最先端技術を集めたスマートシティ『NEOM(ネオム)』の開発を発表しました。

全長170kmほどのエリアを対象にした、総工費5000億ドルの計画。100万人の都市を作る予定です。そしてこのNEOMを、世界的な水素製造の拠点にしようと考えています。

しかしサウジアラビアは石油で潤ってきた国であり、テクノロジーや産業の集積が乏しいといえます。そこで、各国の企業をNEOMに呼び、技術面を補えればと考えているのです。

もし本当にNEOMが水素製造の拠点となれば、石油に続き、サウジアラビアは産業の最上流にあるエネルギー源を抑えることができるかもしれません。

しかし、アラブ首長国連邦の政策を長年観察してきた人々は、オイルマネーで裕福に暮らすことに慣れてしまっています。

国民のメンタリティも含め現在の状況では化石燃料からの移行がスムーズに進む可能性は低いと考えています。

オイルマネーで潤ってきたUAEは、今後、石油のニーズ減少が本格化したとき、国としての存続が可能なのでしょうか。


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