畑で半導体が作られるようになる。

2021年の初頭、自動車業界が悲鳴をあげたことで社会問題へ発展した「半導体不足」の問題。それ以降、自動車のみならず、私たちの生活に必要な多くの電子機器に「生産ができない」問題が生まれました。

加えて需要の高まりにより、消費者にとって「手に入らない」問題が付きまとっています。これらの問題は、コロナウイルス感染拡大による流通網の機能不全、ロックダウンによる工場の閉鎖が根本にあるとみられています。

2年が経った今でも、先は見えない状況が続いている中、問題解決の糸口になるかもしれない、新しい切り口での発表が行われました。

そもそも半導体とは?

半導体とは、導体(電気を通す物質)と絶縁体(電気を通さない物質)の中間の性質を持った物質や材料のことです。

半導体は情報の記憶や数値計算の機能があり、電子機器を構成する重要な部品なのです。つまり、自動車から半導体を除いたら、動かない、ただの”鉄の塊”になるということです。

実は半導体製造は環境に良くない

人間の”脳みそ”にあたる、半導体のほとんどは、地球上で酸素に次いで2番目に多い元素、シリコン(ケイ素)で作られています。

しかし、自然の中にあるシリコンは、酸素やアルミニウム、マグネシウムと結びついているため、シリコン元素の抽出には精錬が必要です。

そのため、半導体には、天然のシリコンを99.999999999%という高純度に精錬し、単結晶化したものが使われています。

このように、半導体として使える”人工化合物”に生成するためには、膨大なコストがかかるといわれています。

さらに、生産プロセスでは、地球温暖化係数の高い二酸化炭素が多く生成されています。環境保全が叫ばれる昨今、半導体技術進歩の側面には、地球環境に影響を与えていることにも課題があります。

紙の原料ケナフから半導体を作ることができる

そこで、半導体製造の課題を解決するかもしれない、新たな半導体の材料「ペーパーエレクトロニクス」が登場しました。

紙を基材にしているため、安価で製造でき、環境に配慮した素材であることから、注目を集めています。

使用されるのは、木材や草から採れるセルロースを10億分の1ミリのナノレベルにほぐして作られるセルロースナノファイバー(CNF)です。つまり、シリコンではなく、植物から半導体が作れるようになるということです。

さらに、2023年1月、東北大学未来科学技術共同研究センター研究チームは、CNFの中でも、紙の原料として広く使われている一年草のケナフに半導体の特性があることを発表しました。

ケナフは生長が早く、二酸化炭素の吸収率は木の3倍〜8倍と、カーボンニュートラルに大きく貢献します。さらに、易廃棄性、低コストなどのメリットが生まれるとみられています。

ケナフは温帯地域での栽培に適しているため、日本での栽培が進んでいないことも現状です。しかし、栽培が普及すれば、半導体の地産地消の可能性も広がります。

青々と茂ったエレクトロニクス畑の光景が広がり、世界中の半導体不足が解消される未来を期待したいですね。

引用画像:
https://botanica-media.jp/3666

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