都市の植樹は命を救う。

高層ビルなどの建物が密集し、自然が少ない都市部の温度が周辺地域より高くなるヒートアイランド現象は、長年、熱環境問題として注目され、さまざまな取り組みが行われてきました。

しかし、近年さまざまな角度からの研究が進められ、地球への影響のみならず、私たち人間の寿命とも密接な関係があることがわかってきました。

ヒートアイランドと死者は関連がある

スペインの研究所をはじめとする国際研究チームが、ヨーロッパの93都市における2015年夏の死者数とヒートアイランド現象との関連を調査したところ、気温上昇に起因する推定死者数が6,700人だったことが明らかになりました。

ところが、仮に都市部の30%を樹木で覆っていた場合、平均気温が0.4℃下がり、死者数の4割近く2,644人もの死亡を予防できていた可能性が高いとみられています。

東京では熱中症の死者が増えている

こうしたヒートアイランド現象は日本でも問題視され、その代表格といえるのが東京です。気象庁によると、過去100年で平均気温が3.3℃上昇し、熱中症による死者数も増加傾向にあるといわれています。

今後も温度が上昇した場合、エアコンの稼働量が増加し、エネルギー使用やCO2排出量を押し上げ、ますます人々の健康を脅威に晒すことも懸念されています。

樹木は天然のクーラーになる

そんな中、ヒートアイランド現象による気温上昇を抑制し、さらに私たちの健康被害の低減に期待する調査が行われ、注目を集めています。

2022年6月、グリーンピース・ジャパンが神宮外苑の樹木による冷却効果を調査したところ、住宅密集地の地表面温度と比較すると、神宮外苑の方が2℃〜4℃程度低いことが明らかになりました。

また、2022年9月の調査では、樹木によって作り出された日陰部分のアスファルトの表面温度が、日向に比べて最大18℃低いという驚くべき結果も公表されています。

木が日陰を作ることで、夏の暑い日中に、道路の表面温度だけでなく気温も下げ、夜になると緑地に溜まった冷たい空気が流れ出して周辺の市街地を冷やす「天然のクーラー」の役割を果たしていると専門家は分析しています。

世界中で気温と死者数の関連が明らかになり、都市における樹木の重要性が高まる中、神宮外苑エリアでは再開発が決定し、樹齢100年を超える樹木を含め1,000本近い樹木の伐採と移植が決定しています。

今後、高層ビルやホテルなど商業施設の建設が計画されており、今まで「天然のクーラー」が機能していたエリアがヒートアイランド化する可能性が指摘されています。

「時代の流れ」という理由で進められている開発は、国や世界が掲げるSDGsやCO2削減を目指すという目標に矛盾していることは否定できず、今回の計画に対する見直し要求があがっていることも仕方がないのかもしれません。

引用画像:
https://thegate12.com/jp/article/383

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