天体観測ができなくなる。

季節の星座、七夕やお月見の行事、流星群や月食などの天体ショー。私たちはその度に空を見上げ、ワクワクしたり、願い事をしたり、夜空に夢や希望、憧れを抱いてきました。

しかし、新たに生まれるテクノロジーが人間の生活を便利にする反面、今後、夜空を見上げても「暗くない」そして「星を見られない」そんな日が来るかもしれません。

20年で星の数が半減する

2011年から2022年の11年間、ドイツ地球科学研究センターの研究者チームが5万回以上の天体観測を行ったところ、毎年7%から10%の割合で夜空が明るくなっていることが明らかになりました。

今回の研究では、光害が毎年約2%という、従来予測の3倍以上のペースで増加していることを示しており、今後目視で確認できる夜空の星の数は20年足らずで半分以下に減少することも予想されています。

LED照明の増加も一因

現代社会では都市の発展に伴って、ビルや看板の明かりが必要以上に夜空を照らし、星空の明かりをかき消しています。このように人工の光が大気中で散乱し、夜空を明るくする「スカイグロー」は世界中で大きな課題です。

同研究グループが世界中約2万地点での観測調査によると、ヨーロッパでは年間6.5%、北米では年間10.4%のペースでスカイグローが増加しているといいます。

特に、従来のオレンジ色の外灯から、二酸化炭素の排出量が少ない環境に優しい照明であるLEDに切り替わったことの影響も大きいとみられています。

明るさは生物の行動を妨害する

こうした人工的な光の増加は人間の睡眠パターンを乱すと同時に、さまざまな動物にとっても有害であることが証明されています。

中でも月の光を頼りに地域を季節ごと移動するウミガメや渡り鳥は、光害によって移動を妨害されることに加え、繁殖活動にも影響が出るとみられています。

最近では、都市や工業地帯による光害だけでなく、スペースX社の「スターリンク」、つまり宇宙からの光害も指摘されています。

光は、人間にとっての利便性を高める必要なものであることには違いありません。しかし、利便性向上の裏には悪影響が起きていることに目を向け、本当に必要なものを最小限にすることが求められているのかもしれません。

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