世界では、飢餓による問題が深刻で、中でも貧困や紛争が要因で食糧が得られず、栄養不良などを起こしている人がたくさんいます。
その一方、生産された食糧を消費できず廃棄せざるを得ない「食品ロス」が日本をはじめ先進国で起きており、問題視されています。この問題を解決しようと、各国で取り組みが始まり、徐々に成果が出始めています。
食品廃棄した小売業者に罰金を科す
フランスでは、2016年に世界で初めて、食品ロス削減に関する法律が制定されました。400㎡以上のスーパーに対し、売れ残った食品を廃棄せず、フードバンクへ寄付するか、飼料や堆肥にすることが義務付けられています。
違反した場合、3,750ユーロ(約46万円)の罰金が科せられるため、施行後、食品寄付が15%以上増え、慈善団体による食事の配給数も大幅に増えたといいます。
大食い動画配信者に罰金を科す
また、中国では2021年4月に「反食品浪費法」が施行されました。違反した場合、飲食店などの事業者のみならず、国民に対しても罰金を科す厳しい法律です。
例えば、飲食店には、食べ切れない料理を注文して食べ残した客に対し、廃棄料金を請求できる権利があります。逆に利用客に食べ切れない量の料理を注文させた飲食店には、最高1万元(約15万円)の罰金が科せられるといいます。
さらに、昨今ブームになっている動画配信において「大食い動画」を配信した人に対しても罰金を科し、10万元(約155万円)を支払う罰則を課しています。
日本の法律に罰則はない
日本でも2019年に「食品ロス削減推進法」が施行され、SDGs達成のために活動が進んでいます。
この法律では、国や地方自治体などの責務などは明らかにされていますが、事業者や消費者への普及啓発がメインで、諸外国のように厳しい罰則が定められているわけではありません。
それでも、農林水産省が公表した2020年度最新の食品ロス量は522万トンと、前回の統計より48万トン減少し、推計を開始した2012年度以降、過去最小を記録しています。
東京五輪で弁当が大量廃棄された
その一方で、何も変わっていないと思わざるを得ない事実も発覚しています。それは2021年7月~8月に開催された、東京オリンピック期間中に大量の弁当が処分された問題です。
五輪・パラリンピック大会組織委員会はこの大会で「食品ロス削減」や「持続可能性に配慮した食材の調達」を達成するため、2018年以降多くのスポーツ大会で必要な弁当数を算出するなど実証実験を行ってきたといいます。
しかし、全42会場のうち20会場で、13万食(1億1,600万円相当)の弁当が食べられることなく、こっそり処分されていたことが明らかになっています。
さらに後日行われた理事会では、大会を通じての弁当のロスは30万食で提供数の19%に及ぶことを公表していますが、選手村のビュッフェはどうだったのかなど、全体像は未だ明らかになっていません。
食品ロス削減推進法に罰則がない現行の法律では、多くの食品を廃棄したとしても、事業者にはその量を公開する義務がないため、国の統計に疑念が抱かれています。
日本人は、規則を守る民族だといわれていますが、この事実を目の当たりにした今「機能していない法律の一部分を改正するべき」との声があることも事実です。
この問題については、アメとムチ作戦で、まずは諸外国のような、厳しい”ムチ”も必要な時に来ているのかもしれません。
引用画像:
https://www.youtube.com/watch?v=nAPA1EOU108&ab_channel=TBSNEWSDIGPoweredbyJNN
参考サイト:
今回は、近年世界中で問題となっている『食品ロス』について、諸外国で行われている食品ロスに対する取り組みや、日本が食品ロス解決に抱える課題について簡単にご紹介したいと思います。 このサイトでも食品ロス問 ...
食べられる食品の廃棄を減らす食品ロス削減推進法の施行から2年が経ちました。この間、日本の取り組みは進んだのでしょうか。海外の法律と比較しながら現行法の課題を考えます。