インターステラー

『インターステラー』(原題: Interstellar)は、クリストファー・ノーラン監督による2014 年のSF 映画である。

サターン賞の「SF 映画賞」「脚本賞」「⾳楽賞」を受賞するなどの評価を受けた。

アカデミー賞では、「作曲賞」「⾳響編集賞」「録⾳賞」「美術賞」「視覚効果賞」の5 部⾨にノミネートされ、「視覚効果賞」を受賞した。

興⾏的にもヒットとなり、北⽶で1 億8 千万ドル、世界で6 億7 千万ドルを超える興⾏収⼊を上げ、⽇本でも12 億円を超える興⾏収⼊となった。

引⽤:https://www.eiga-square.jp/title/interstellar

数々の賞を受賞し、世界的にもヒットした『インターステラー』のヒット要因を分析する。

やはり「神話の法則」が採⽤されている

ヒットした映画においてストーリーに「神話の法則」が採⽤されている場合多いが、『インターステラー』にも採⽤されていた。

神話の法則の型を列記する。

1.⽇常の世界
2.冒険へのいざない
3.冒険の拒絶
4.賢者との出会い
5.第⼀関⾨突破
6.敵との戦い・仲間との出会い
7.最も危険な場所への接近
8.最⼤の試練
9.報酬
10.帰路
11.復活
12.帰還

以下、『インターステラー』のストーリーの流れを⼤まかに解説する。

主⼈公の元宇宙⾶⾏⼠クーパーは、異常気象により⼈類滅亡の危機にある地球にて家族と農業を営んでいた。

クーパーの娘マーフの部屋の本棚から本が勝⼿に落ちる現象から、何者からによるメッセージだと気づく。

メッセージを読み解いた先には、とうの昔に廃⽌になったNASA があった。そこで⼈類を滅亡から救う、2 つのプランがあると教えられる。

プランA は、「⼤規模スペースコロニーで全⼈類移住」。⽅⾈のような⼤規模スペースコロニーを構築し、⼈類を移住させ、そのまま別の星に送ろうとする計画。

プランB「⼈類の受精卵のみを移住先で⼈⼯培養する」「種の保存」のみを⽬的とした計画。前提として地球に住む⼈類は助からない⾮情なプラン。

クーパーは、⼈類と⾃⾝の家族を救う為に、「彼ら」と呼ばれる地球外⽣命体が創造したワームホールを通り抜けて⼈類の移住が可能な星を探索するため宇宙へ旅⽴つ。

先に出発していた先駆者達から、⼊植が期待できる3 つ惑星から信号が送られていた。まずは、⽔の惑星、そして氷の惑星と探索し危険な⽬に遭う。

氷の惑星では、先駆者のマン博⼠に襲われ命の危機にさらされる。(マン博⼠は孤独に死ぬ運命に耐えられず、⾃⾝の発⾒した氷の惑星は⼈類の⽣存が可能とニセの信号を送っていた)

しかし、クーパー達は、マン博⼠から逃れる。なお、マン博⼠は死亡。

宇宙船の酸素と燃料がほとんどなくなり、クーパーはもう1 ⼈の宇宙⾶⾏⼠アメリアを最後の3 番⽬の惑星へ送り、⾃⾝はガルガンチュア(ブラックホール)に落ちていく。

「彼ら」の⼿引きなのか、4 次元超⽴⽅体テサラクトの空間に辿り着く。そこは、クーパーの娘マーフの部屋を通じて、地球の過去・現在・未来全ての時間と連結している空間だった。

テサラクトの中で、ガルガンチュアで得た情報を娘に伝え、娘マーフは、プランA の実⾏に成功し、地球の⼈類を救われた。

その後、テサラクトから放出され、宇宙空間を漂っていたクーパーは、⽣き延びた地球⼈類に保護される。

年⽼いた娘と再会する。なお、宇宙と地球の時間の流れは違うので宇宙にいたクーパーは娘より若い状態。

クーパーは、娘の後押しで、アメリアがたどり着いた惑星に再び旅⽴つ。

余談だが、当初、『インターステラー』は、スティーブン・スピルバーグが監督をする予定だったが、スピルバーグが降板してノーラン監督が引き継いだ。物語の⽅向性も多く変更されている。

当初、クーパーとアメリアのラブストーリーだったが、クーパーと親⼦の物語に路線変更された。

その他にも異星⼈や悪のロボットと遭遇し、戻ったら地球⼈類が地球から去った、という結末だった。

しかし、⼈類は地球からの脱出に成功し、コロニーで次の⼊植可能な惑星にむけて準備を進める、という内容に⼤幅に変更された。

ラブストーリーから⽗娘の物語になった理由は、ノーラン監督は、プロデューサー、エマ・トーマスとのあいだに四⼈の⼦供がいる。

ノーラン監督は、映画に親⼦関係を持ち込むことにより、監督⾃⾝の家族や⼦どもに対する思いを映画の中に盛り込んだ。

『インターステラー』は、壮⼤な宇宙の物語だが、同時に、家族を愛する⼀⼈の⽗親の等⾝⼤の物語でもある。

説明しない!それが「ノーラン流」

ところで『インターステラー』の評価はかなり分かれている。

壮⼤な宇宙の物語を理論に基づいて映画化した素晴らしいハードSFだが、宇宙に対する予備知識が少しでもなければ全く理解できない内容だ。

「どれぐらいSF の知識があるか?」
「どれぐらいブラックホールやワームホールや特異点や5 次元などの知識があるか?」

という、観賞する側が持っているそもそもの前提知識保有量によって、感想に天と地ほどの差が出ている。

というのも、映画の中では、実際の科学的知識や知⾒や理論に裏付けらたSF 部分には、解説や説明がほとんどない。

セリフとして少々出てくる程度しかない。映画の内容を理解できる。逆に全く理解できない!と真っ⼆つに分かれているその原因は、状況説明が映画の中でほとんどされていないからだ。

アインシュタインの「相対性理論」、ガルガンチュア、テサラクト???知る⼈が分かればいいというスタンスをとっているのが『インターステラー』だ。

⽤語や専⾨知識に対して解説を映画の中でしない!というのは『インターステラー』のみならずクリストファー・ノーラン監督の映画では、よくある。

ノーラン監督の映画『インセプション』や『ダークナイト』三部作は、想像をかき⽴てるためのより多くの要素が詰まっていた。

しかし、あえて説明をしないことで、観客達は登場⼈物達の視点から物語を体感していく。

SF を主題にしているがファンタジーにしない

宇宙をテーマにした映画は夢や冒険にあふれていて観ていて楽しくなる。

しかし、どこかイメージ先⾏で、現実や現代の時代とかけ離れている印象がある。それが映画という虚構の世界ならではの⾯⽩さかもしれない。

理論や学識よりも、イメージや想像⼒が先⾏している夢の世界、というのがこれまでのSF 映画の印象だ。

しかし、『インターステラー』の世界観構築は、理論物理学者の権威であるキップ・ソーンと、SF 映画『コンタクト』のプロデューサーだったリンダ・オブストによってプロデュースされた。

特に、キップ・ソーンは重⼒波研究の功績によって2017 年にノーベル物理学賞を受賞している。ワームホールを正確に描いた映画は今までなかった。

今回初めて、その描写がアインシュタインの⼀般相対性理論に基づいている。『インターステラー』の根元は現代物理学をベースにしたハードSF である。

ノーラン監督のこだわり

監督のクリストファー・ノーランは、リアリティを映画の中で追求している。ノーラン監督は、CG を極⼒使⽤しないことで有名だ。

現在の映画の主流はグリーン背景で撮影し、後からCG を合成する⼿法がとられているが、ノーラン監督はグリーン背景を⼀切使⽤しない。

セットは極⼒、作る!実際のシーンに近い場所で撮影する!を信条としている。

そのこだわりが分かるものを、以下に列記する。

  • クーパーの広⼤なトウモロコシ農園は、本当に種から植え始め200 万平⽅メートルトウモロコシ畑を⽤意。
  • 砂嵐は実際に砂を⼤型扇⾵機で巻き上げる。
  • 宇宙船のシーンは、実際にセットを作った。
  • 宇宙船が⾶んでいるシーンは、ひと昔前のCG を使わない⽅法(模型での撮影)を参考にしている。
  • ⽔の惑星や氷の惑星の撮影では、実際の湖や氷の⼤地で撮影されている。

このように、映画という虚構世界でありながら、リアリティを追求したのだ。また、ノーラン監督のデジタル嫌いでも有名だ。

現在の映画界ではほとんどの監督がデジタルカメラで撮影しているが、ノーラン監督はフィルムを使った撮影を⾏っている。

また、思考を奪われるという理由で、携帯電話も持たない、メールも使ったことがない。

ノーラン監督は、まさしくデジタル主流時代の逆を突き進む男だ。

CG 全盛のこの時代において、時代を逆⾏したそのクレイジーな姿勢が『インターステラー』には結集されている。

愛がテーマ

親と⼦の愛。
恋⼈との愛。

クリストファー・ノーラン監督は、『インターステラ―』は宇宙の映画ではなく、家族の映画だと主張している。

合理的だけれど、⾎も涙もない⾮情な「プランB」は、失敗。結果的に⼈類への“愛”や親⼦の“愛”によって「プランA」が成功した。

クーパーがなぜブラックホールを抜けてテサラクトによって過去のマーフィーの部屋にたどり着くなど唐突すぎる展開もあるが、これは“親と⼦の愛”のなせる業かもしれない。

また恋⼈のいる星が⼊植可能だと主張したアメリアは正しかった。彼⼥は恋⼈と再会を果たしている。

愛について、親⼦の愛(クーパー)、恋⼈の愛(アメリア)、⾃⼰愛(マン博⼠)と3 つの視点から描いている。

ノーラン監督は、劇中でアメリアに愛の強さと、愛こそ⾼次元に到達できる⼒であると語らせた。

そしてことあるごとに、クーパーは娘を思う気持ちを強調している。けれども同時にマン博⼠の⾃⼰愛を描き、愛が極めて狭量であることを⽰す。

愛とは何かを考えさせるテーマをSF 映画の中で描写している。

宮崎駿⽒は「半径3m 以内に ⼤切なものは ぜんぶある」と述べたが、すなわち半径3mより外のものが⼤切とは思えないということだ。

家族に対する愛と同じ想いを、知らない他⼈に注ぐことはできない。

どんなに博愛の精神を発揮しても、我が⼦への愛には敵わない。

愛とは独善的なものだ。全⼈類を愛することなどできなくても、家族や、恋⼈など⾃⾝にとって近しい者への強烈な愛が結果として⼈類を救う、ということだ。

地に⾜のついたSF

『インターステラ―』のポイントをまとめる

  • 神話の法則
  • ノーラン監督の徹底的な本物志向
  • ノーベル賞受賞の科学者による圧倒的な知識を下地にしたハードSF
  • 「愛」がテーマ
  • これらのポイントから、『インターステラ―』を⼀⾔で⾔うと地に⾜のついたSF。
  • ノーラン監督は、SF 映画では初めて、実際の科学者の監修を受けてワームホールを理論に基づいて描写した。
  • CG での合成に⾛らず、あくまで撮影技術によるSF にこだわり映画という虚構の世界の中でリアリティを追求した。
  • ⾃⾝の初めての⼦どもが誕⽣するその⼼理を映画の世界の中に投影させ、⾃⾝の「⽗親としての愛」を映画の中で表現。
  • ハードばかりでなく、ソフト⾯でも深い感情表現を⼤切にしている。